こうした状況を目の当たりにすると、「このままでは置いていかれるのでは」という焦りがふと頭をよぎります。ITが得意な人にとってはなんてことのない作業でも、苦手意識のある人間は腰が重くなるものです。実は私もIT音痴なのです。
SNSを楽しむシニア層もいれば
距離を置き続ける人たちもいる
インターネットやSNSが登場した頃にも似た空気がありました。SNSに距離を置き続けるシニア層は今も一定数いますが、一方で存分に活用し、楽しんでいる人たちも多い。最近はYouTubeを自在に使いこなしている高齢者も珍しくありません。
今回の大阪・関西万博では、入場は電子チケット(QR コードなど)が基本で、会場内のキャッシュレス化も徹底されていました。新たな技術は否応なく生活の中に入ってくる。だからこそ、「食わず嫌い」では時代に追いついていけないリスクを抱えてしまいます。
どんな優れたテクノロジーも、根本的な「受け取り方と考え方」をアップデートできなければ活用できません。『松山鏡』における鏡は、まさにその象徴的な存在といえるでしょう。
もし正助や妻が、より開かれた感性を持っていて、それが「自分を映す道具」だと気づいたなら、父を思慕する思いがさらに強くなったり、夫への愛情を再確認する場になったかもしれません。また、暮らしの利便性も格段に上がったでしょう。
しかし、過去の枠組みから出なければ、その可能性を閉ざしてしまう――これは現代でも変わらない構図です。
AIに限らず、新しいテクノロジーやカルチャーに対しては柔軟な姿勢がポイントになります。そのためには、とにかく自分でやってみる、行動してみることでしょう。それができない人はチャンスを逃してしまうかもしれません。
未知のものに出合った時に、学べる人と学べない人を分けるのは、その人の姿勢にほかなりません。「食わず嫌いは損をする」「動かなければ何も変わらない」――いくつになっても肝に銘じておきたいものです。
(構成/フリーライター 友清 哲)







