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「生き方や感情は顔つきに現れる」という楠木新さん。著述家として多くの人を取材し、さまざまな「顔」に接してきた経験から、いつしか「顔の研究」がライフワークになったと言います。『豊かな人生を送る「いい顔」の作り方』第17回は、人間関係の始まりにおける「顔」の役割について考察します。
相性は“最初の数秒”で決まる?
人は、会社や学校といった組織の中で、気の合う人を見つけ、小さな集団をつくる性質を持っています。
小学校や中学校の頃を思い出すと、入学時やクラス替え直後はぎこちなかった関係が、いつの間にか打ち解け、気の合う人たちがまとまり、仲間ができていたはずです。
のちに親友と呼べる相手との最初の縁が、「席が隣だった」ことから始まることも少なくないでしょう。偶然のようでいて、人はごく限られた“非言語情報”で相性を見抜いているのです。
私がかつて教授を務めていた女子大学でも、新入生ガイダンスの初日には自然に3〜5人ほどの小グループが形成され、そのグループはゼミ選択までの2年間はほとんど変わりません。学生たちは、顔つきや物腰といった要素から、瞬時にお互いの相性を判断しているのだと思われます。
臨床心理学者の河合隼雄さんは『心理療法対話』(岩波書店)で、「わたしたちの世界でも常に相性が問題になる」と語っています。
思春期のクライエント(依頼人)と向き合うとき、部屋に入ってきた瞬間に関係ができなければ、その後どれだけ努力しても難しいということです。
また、30人ほどを集めて「必ず自分に合う相手がいるから、その人を見つけてください」という実験では、だいたい双方がぴたりと合うそうです。ただし、それを定義したり、理論化するのは難しい。非言語的な領域が大きく、因果関係で説明できないからでしょう。







