(3)訴訟
 審査請求の裁決に不服がある場合、裁決を知った日の翌日から6カ月以内に地方裁判所に訴えを起こすことができる。

 訴訟は、「不服申し立てに対する行政庁の決定又は裁決を経た後」でなければ提起できないとされており、必ず審査請求を経なければならない。

 ただし、審査請求がされた日の翌日から起算して3カ月を経過しても裁決されないときは、裁決を待たずに提起することが認められている。

 相続税に限ったことではないが、税務に関する訴訟は国税当局の処分が「適法かどうか」を中心に審査される。上級審に進むほど審査は法律問題が中心となり、事実関係の再評価が限定的となるため、納税者の新たな主張や証拠で判断を覆すことは、一層難しくなる傾向がある。

なぜ納税者の主張は
認められにくいのか

 不服申し立ては、税務署の判断に異議を唱え、見直しを求める正式な手続きではあるが、制度が存在することと、「実際に主張が認められること」は別問題だ。

 先に述べた通り、納税者の主張が一部でも認められるのは再調査5.7%、審査請求20.0%、訴訟4.8%(令和6年度国税庁統計)である。

 では、なぜこれほどまでに認められにくいのだろうか。背景には、制度的な構造と実務上の要因が複合している。

 課税処分は、法令や通達に基づくことが原則だ。課税処分の内容を覆すには、税務署による法令の誤適用や計算誤りなどを立証する必要がある。どの条文や通達が誤って適用されたのか、どの証拠がそれを裏付けるのかを整理して書面で主張しなければならない。

 しかし、一般の納税者が処分を覆すほどの資料をそろえ、法的な枠組みに沿って主張するのは容易ではない。主張の整理が不十分な場合、審理の対象とならないこともある。

 国税不服審判所の公表事例でも、「主張に一定の合理性があるが、証拠が不足している」として棄却されたり、鑑定評価や取引実例などの証拠があったとしても、税務署の算定が「合理的」と判断されている。