その内容には後で触れるとして、まずは文在寅政権を振り返ってみたい。
前半期には、社会が変わるだろうという期待が存在した。しかし、任期5年を過ぎた段階での各種統計には改善の様子が見られなかった。
代表的な社会問題とされるいくつかの分野を見ると、所得不平等はジニ係数上ではわずかながら緩和したものの、実質所得における上位10%と下位10%の差は広がり続けている。
なお、韓国政府が2024年4月に出した報告書によると、上位1%が韓国の富の25.4%を、上位10%が58.5%を占めており、下位50%の割合はわずか5.6%にすぎなかった。
韓国の日刊紙・京郷新聞によると2025年3月に韓国の不平等に関する33の指標の推移を最大で20年分にわたって分析したところ、19の項目が否定的な推移を見せていたという。所得に関する不平等は少しずつ緩和されているが、資産の不平等は広がり続けているとのことだった。
また、2017年から2022年までの所得移動統計によると、所得上位20%の維持率が最も高く、次に下位20%の維持率が高かった。こうした統計により、社会の両極化が固定されていると解釈されている。
自殺率は高止まり
少子化は改善されない
自殺に関する統計については、言うまでもないだろう。
人口10万人あたりの自殺者から算出する自殺率は、2017年の24.3から2022年には25.2へと上昇した。韓国の自殺率は2003年以降ずっと、OECD加盟国38カ国のうちワースト1~2位の高い水準となっている。なお、2024年の自殺率は28.3である。
労働災害も深刻だ。労災が適用される労働者100人あたりの災害者数を示す労働災害発生率は2017年の0.48%から2022年は0.65%へと上昇した。労働災害による年間死亡者も2017年の1957人から2022年には2223人へと上昇した。
さらに今や世界で知らない者はいないといっても過言ではない出生率の低さも改善されなかった。
15~49歳の女性1人が同じ時期に出産すると予想される平均出生児の数を示す合計特殊出生率は、2017年の1.05から2022年0.78へと減少した。2015年以降の下降は、2023年の0.72を底に、2024年には0.75と反転したが、やはりOECD最悪の数値だ。生まれる子の数も2017年の35万7700人から2022年には24万9000人へと減少した。







