この指摘は2020年になされたものだが、2022年3月の大統領選挙でも同様だった。尹錫悦候補はマンション300万戸を供給するといい、李在明候補は250万戸を掲げた。国家としての住居政策の差はそこに存在しなかった。
さらに韓国の左派が一貫して導入を求めているあらゆる属性による差別を禁じる「(包括的)差別禁止法」に両党は共通して反対していた。マイノリティの権利保護は、日本よりも大幅に遅れている。
背景には、両党にとって票田であるプロテスタント教会の反発がある。票を失うことを恐れ、差別を放置しているのだ。
いみじくも李在明は2025年2月に「民主党は中道保守」で「進歩ではない」と繰り返し述べている。
まやかしの敵対ごっこが
韓国の民主主義を後退させた
ここからが本論になる。
こんな「まやかし」を可能にするのが、北朝鮮もとい分断体制の存在だ。キム・ヌリいわく「分断体制の中に生きること」となる。
つまり全体主義国家・北朝鮮を滅ぼし、その脅威の排除を徹底する反共集団が「保守」を名乗るため、もう一方が自動的に「進歩」となっているだけということだ。
少壮派の学者で、韓国を「圧縮消滅社会」と称する著書を2024年に出した李官厚国会立法調査処長も似たような指摘をしている。
『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』(徐 台教、集英社クリエイティブ)
韓国政治と政党には競争すら存在しないというのだ。ただひたすら相手を敵視し、政治的な利益だけを得ればよいという確固とした態度だけが存在するという。社会をよくすることが目標にならない政治が韓国社会の病気を生み、育て、そして放置されているというのだ。
日本とは異なり一院制の韓国では、4年ごとに国会議員総入れ替えの選挙が行われる。保守と進歩を代表する両党は2016年の総選挙では総議席の81.67%を、2020年と24年は94.33%を獲得している。その間、韓国社会は悪くなり続けてきた。
このように「進歩」が必ずしも「左派」ではなく、「保守」が必ずしも「右派」を指さないという点が、韓国社会の理解を難しくしている。
だが、こうした説明には非常に納得がいく。韓国社会の問題が解決されない背景には、政治が機能していない点に加え、左派の不在があるということだ。







