FTXのような詐欺が起きる可能性も
11月21日の終値時点で、ビットコインの対ドルレートは4月の底値近辺だ。「チャートの形状から下落は一服した」と考え、押し目の買いを入れる投資家も一部いるようだ。
しかし、先行きは慎重に考えた方がいいだろう。ビットコインの価格は投資家の心理に影響されやすい。米国では株価は割高だと考え、売りに回る投資家が増えつつある。
近年、投資家の需要が高まったプライベート・クレジット(銀行を経由しない融資)の価値が急落する案件も増えた。米国の労働市場や個人消費の先行きへの懸念も増えている。
安全性を第一に考え、主要先進国の中で最も格付けの高いドイツ国債を買う投資家が増えているという。日米仏では財政出動が増えることへの懸念、株価の割高感もある。その結果、資産価格の調整リスクを警戒し、質への逃避を急ぐ投資家は多い。物質として安定しているゴールドの需要も根強い。
長期的な推移では、依然としてビットコインの価格は高い水準にある。しかし、繰り返しになるが、ビットコインなどの暗号資産には法定通貨のような価値の裏付けがないことを忘れてはならない。景気が悪化し株価の調整が鮮明になると、暗号資産には下押し圧力がかかる可能性がある。そのインパクトは未知数だ。
依然として暗号資産の需要は増え、関連企業の成長は間違いないと高をくくる人は多い。一部では、17世紀のオランダで発生した「チューリップバブル」に似た過度なリスクテイクが発生したとの指摘もある。
リスクテイクの逆回転が本格的に起きた場合、暗号資産の価格は下落する可能性も否定できない。今後の状況次第で、取引業者が破綻する、22年に起きたFTXのような詐欺事案が発覚することも考えられる。
それが現実のものになると、多くの投資家が損失を被るだろう。世界の金融市場が不安定になる展開も想定される。暗号資産の先行きは慎重に考えた方がよさそうだ。








