これには、意識というものの性質や、子どもが世界を理解し始める方法が関係している。

 だが、すべてを自分中心の視点から観察する「バイアス」があることを自覚すれば、ものの見方を変えていくことができる。

 他者中心的な見方を意識して増やしていけば、自分の抱える問題や悩みをそれほど重荷に感じなくなるし、社会的交流を通してサポートを得て、自分を客観的に見られるようになる。

幼少期に思いやりの心を持てるかが
成人以降の幸福度を左右する

 一般に、子どもは正常な発達の一環として、自己中心的な視点から他者中心的な視点にシフトするが、「どの程度」シフトするかは人によって違う。

 このシフトがなぜ必要かといえば、大人になった時の幸せがかかっているからだ。

 幸せな子どもは幸せな大人になることが多く、子どもを幸せにするのは良好な社会的関係だ。

 そして人とうまくやっていくには、自分本位の考えを抑えて、人を思いやらなくてはならない。

 大人の幸せの根幹にあるのが、この「幼児期のあり方」だ。

環境や精神状態によって
「自己」は形を変える

 私たちは自己という言葉に慣れっこになっていて、この言葉がほかのことを指すために使われるとは考えもしない。

 自己とは簡単にいえば「自分が何者か」ということだが、それは状況によって変わる。

 たとえば面接で「あなた自身のことを教えてください」と言われたら、職歴やスキル、学歴などを簡単に話すだろうし、デートで自己紹介してと言われたら、たぶん職歴ではなく、趣味や好きな食べもの、音楽などについて語るだろう。

 また自己には、「自分の心理状態」という意味もある。

 たとえば混乱すると、「自分が自分でないみたいだ」と感じることがある。自分の人生に関する事実は何も変わっていないのに、いつもの自分と違うような気になったりする。