ちなみにチリでは、およそ1000人の男性と400人の女性を対象にした研究が行なわれた。被験者の登録時の平均年齢は74歳だった。

 ここで被験者は、四肢除脂肪体重指数(ALMI。身長で補正した四肢の筋肉量)に基づき4つのグループに分類され、経過を観察された。

 12年後、下位4分の1の被験者のおよそ50パーセントが死亡していた。一方、除脂肪量が上位4分の1のグループでは、20パーセントにとどまった。ここで因果関係を確立することはできないが、こうした発見には説得力も再現性もあるので、単なる相関関係とは思えない。筋肉は長生きを助ける。

 ここもやはり、寿命と健康寿命が大きく重なり合う分野だ。要するに、筋肉量が多いと死ぬ時期が遅くなるのは、健康寿命も維持されるからだと考えられる。だから私は筋骨格構造(ターミネーター風に「外骨格」と呼んでいる。他に良い表現が見つからない)の維持に大きな重点を置く。

65歳以上にとって
「転倒」は死を意味する

 あなたの外骨格は、実際の骨格(骨)の状態を真っすぐに保ってくれる。外骨格の筋肉量が増えれば、あらゆるトラブルから守られるだろう。手術後の有害転帰〔治療後、症状が進行して有害な帰結になること〕さえ予防できる。

 だが最も重要なのは、転倒のリスク低下と大いに関係していることだ。転倒は、高齢者に障害や死をもたらす大きな原因だが、無視されることが多い。

 図1からも明らかなように、65歳以上の人たちが事故で命を落とすいちばんの原因は転倒で、他を大きく引き離している。

図表:アメリカの事故死同書より転載 拡大画像表示

 しかもここには、命に関わらないけれども重大な転倒事故で痛みを経験しながら徐々に衰え、3カ月や半年、あるいは1年後に亡くなった人は含まれない。