いまや東大大学院生の
4人に1人が中国人に

 こうした中国の教育熱を背景に、日本の大学の最高峰、東京大学にも大きな変化が起きている。

 東大の中国人留学生数は2024年11月時点で3545人に達し、2014年の3倍にまで膨らんでいる。全留学生の7割を中国人留学生が占め、学生数全体でみても、今や中国人が東大の学生の1割を超えるまでの存在感を放つ。

 特に伸びが顕著なのが大学院生だ。

 実は中国人留学生の95%にあたる3361人は大学院生。東大の全大学院生の4人に1人を中国人が占める状況にある。

 なぜ東大を選んだのだろうか。文京区の本郷キャンパスを訪れ、2人の留学生に話を詳しく聞いた。

「中国の大学入試は基本、たった1回の高考(中国の全国統一大学入試)の試験で決まるのですが、実は点数だけではなく、出生地などの条件も加味されます。例えば、北京大学でも各省ごとに入学できる学生の人数が割り当てられており、制限があります。ですが、東大は外国人でもそうした不平等は一切ありません。レベル的にも(中国トップの)北京大や清華大よりも、東大に入る方が、はるかに簡単なのです。だから私も……」

 現在、東大の大学院で学ぶ、中国人男子留学生(27)は、日本への留学を決めた理由をこう明かしてくれた。

 そして彼は続けた。

「ただ、東大を卒業しても、景気の悪い今の中国で、良い仕事が見つかるかは分かりません。中国人学生の間でやはり人気がある留学先は米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの英語圏なのです。中でも最強の学歴はなんと言っても米国の大学・大学院です。ただ今の中国の景気では、スタンフォード大学やハーバード大学を出ても、中国の公務員になるようなケースもありますから、何がいいのか、正直分かりませんね」と言って、彼は苦笑した。

中国から見た日本は
最も留学コストが安い国

 東大大学院・工学系研究科に在籍し、以前は英国の大学院でも学んだ経験がある別の中国人男子留学生(27)にも話を聞くことができた。