背景について、SAPIXの教育情報センター本部長を務める広野雅明氏はこう説明する。

「以前に比べて中国人の生徒が増えているのは、否定のしようがない事実です。うちは国籍別の調査をしているわけではないですが、中国人の生徒さんがすべての校舎にいるというわけではなく、文京区や湾岸エリアなど一定のエリアに固まっている状況です」

 さらに、広野氏によると、SAPIXには入塾テストがあるため、さすがに日本語を理解できない中国人生徒までもが入塾することはないという。当然だが、授業でも中国語を使うことは一切ない。中国人の保護者にもコミュニケーションは、日本語で取ると伝えている。

 むしろ「日本の小学校プラスアルファの学力を持った児童でなければ、うちの授業についていくのは厳しいのです」と語る。

 そんなハードルがあってもなお、大手塾には中国からの「波」が押し寄せる。「(中国籍の)生徒数は今も増えています。中国の方が、良質な教育環境を求めて日本に来ているのは事実でしょう。そうした中、SAPIXを選んでもらえているというのは、我々もありがたいことなのです」と、広野氏は話した。

大手有名塾の成績上位者が
中国人だらけになる日もそう遠くない?

 こうした現状について、前出の埼玉県の中国人専門移住コンサルタントは「中国人は特に『出口』を気にします。つまり、塾の合格実績をよく見ているので、実績が高いSAPIXに人気が集中しているのです。あとは、早稲田アカデミーもSAPIXと並んで中国人には断トツの人気があると言えます」と説明した。

 熾烈な日本の中学受験も、もはや日本人のものだけではなくなってきた。中国人の子供が日本の大手有名塾で成績上位を占めるというのも、今では珍しい話ではなくなった。

 日本の親からすれば、少し迷惑な話なのかもしれない。だが翻って日本はもはや、「そういう国」になったと受け止め、競争するしかない時代に入ったともいえる。中国との競争は既に、社会に出る前、子供の時代から始まっているようだ。