高校では新聞委員会だった
小説家の村上春樹

 兵庫県の県都・神戸市にある県立の高校だ。各方面で活躍する卒業生がたくさん巣立っており、ネットワークの重厚さを誇る。関西にある公立高校では、五指に入る伝統校だ。

小説家の村上春樹小説家の村上春樹 Photo:SANKEI

 活躍ぶりが目立つ卒業生といえば、小説家の村上春樹が筆頭だろう。村上の作品は『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』などが欧米、アジアなど世界五十数カ国以上で翻訳出版されている。世界に多くの愛読者がいるということでは、日本人の小説家としては飛び抜けている。

 村上は兵庫県西宮市育ちで、神戸高校を卒業後、1年の浪人生活ののち早稲田大第一文学部に入学、7年間在学したあと卒業した。谷崎潤一郎賞、チェコの文学賞「フランツ・カフカ賞」、スペイン芸術文学勲章など内外からいくつもの文学賞を受賞している。芥川賞候補にも2度、なっている。

 2021年10月には、早大キャンパス内に早稲田大学国際文学館(通称「村上春樹ライブラリー」)が開館した。

 村上は神戸高校では新聞委員会に属していたが、読書や映画に明け暮れ優等生ではなかったようだ。「学校というものがあまり好きでなく、ろくに勉強もしなかったし、どちらかといえばかなり反抗心の強い生徒だった」「高校時代は麻雀をやったり女の子と遊びまわったりしているうちに三年が終わり、……」(『村上朝日堂の逆襲』)と記している。

 20年前から、村上にはノーベル文学賞の呼び声が高かった。2025年も英国のブックメーカーの予想では、村上が3番人気となっていた。今年こそと「ハルキスト」(熱狂的な村上ファン)たちは受賞の朗報を待っていたが、この10月9日にスウェーデン・アカデミーは、ハンガリーの作家・クラスナホルカイ・ラースロー(71)に文学賞を授与すると発表した。

 村上は1949年1月生まれ。チャンスはまだ、続くだろう。

 日本人のノーベル賞受賞者(米国籍を含む)は累計で30人(他に1団体=日本被団協)だ。このうち、文学賞の受賞者は2人しかいない。1968年の川端康成(旧制大阪府立茨木中学・現茨木高校―東大文学部卒)と、94年の大江健三郎(愛媛県立内子高校から松山東高校に編入―東大文学部卒)だ。