そのため「池袋北口」には、「ガチ中華」の店や中国の物産品を扱う専門の小売店など、中国人の生活に根ざした店が自然発生的に集まるようになった。

 そんな街が「池袋北口」。

 取材班は、1人の中国人男性に話を聞いた。興味はやはり、異国の地である日本で日々、どんな思いで過ごしているのかということだった。

手軽に学歴を得るために
日本への留学を選んだ

 中国・内モンゴル出身の許多さんは、現在28歳。埼玉県在住で、日本に来て6年目になる。日本への関心は中学生の頃から。日本のアニメや文化に興味を持つようになったことが、来日のきっかけでもあるという。

――日本ではこれまで、何をされていたのですか。

「2019年に中国の大学を卒業し、新型コロナ禍で大変ではありましたが、2020年12月に来日しました。高田馬場にある日本語学校に2年間通い、2023年4月に埼玉大学の大学院に入学しました」

――なぜ、日本の大学院に?

「中国は競争が激しいのです。中国の大学院入試は、数学や英語など、専門科目以外の試験もあります。これに対し、日本の大学院試験は専門科目と小論文だけ。それに日本の試験は過去問を解いてさえおけば、効率的に対策ができるのです」

――欧米への留学は考えなかったのですか。

「僕は英語が苦手なので……。やはり、日本の留学はコスパが良いと思いました。学費が安い割には、高い水準の教育が受けられます」

――将来はどうする予定ですか。

「日本で博士号を取って中国に戻ります。大学の教員を目指しています。日本とは違い、中国で大学の教員になるには最低、博士号が必要なのです。ただ、中国で博士号を取るのは難しいので、日本の大学院で博士号を取ってから、中国に戻ります。両親も私が帰国することを望んでいます。日本で知識を吸収し、母国に還元したいと思っています」

――池袋にはよく来ますか。

「家が埼玉にあり、電車で来るのが便利なので、池袋には週に1~2回来ます。火鍋や四川料理のお店がたくさんあり、中国人の友達や先輩と食事を一緒にすることが多いです。あと、中国の食材を扱う物産店がいくつもあり、家で自炊する時に使う中国の調味料を買いに来たりもします」