――自炊はよくするのですか。

「よくします。埼玉の家の近所のスーパーで肉や野菜など食材を買って、中国の調味料を使って炒め物を作ったりします。でも、日本の肉や野菜は、内モンゴルよりも少し高いですね。外食するにしても内モンゴルは1食200~300円でしたが、日本では500~1000円はかかります」

――仕送りなど、ご両親から金銭面での支援はありますか。

「月10万円程度、仕送りをしてもらっていて、大学近くの家賃4万円のアパートに今は住んでいます。中国にいた時はよく夜遅くにタクシーで帰宅していましたが、日本はタクシー代が高いので、池袋に来ても必ず終電で帰るようにしています」

新チャイナタウンの波は
郊外にも波及しはじめた

 これまで話を聞いた中国人留学生の多くは留学後、日本で就職し、その先に日本永住を見据えていた。一方、許さんは中国で職を得るため、日本にわざわざ「学歴」を取りに来ているようだった。

 これも最近増えている、中国人留学生の1パターンだ。

 1つのイメージだけでは、決して語り切れない在留中国人たち。新チャイナタウンの池袋には、こうしてさまざまな中国人が集まって来る。

 ただここには、横浜中華街にある「善隣門」のような象徴的な門や、外と中を区別する明確な「境界線」などは存在しない。

 新チャイナタウンは、内と外との区別をあいまいにしたまま、中国語が日常的に飛び交う独自の「中国経済圏」を築き上げ、日々、膨張を続けている。

 池袋を含め、東京23区には今、在留中国人全体の3割に相当する約24万人が居住する。

 池袋や高田馬場、新大久保などが依然、その「核」となってはいるが、最近では、江東区亀戸、江戸川区小岩など、都心の周辺部にも新たな核が生まれている。こうした、新チャイナタウンが次々と新たな中国経済圏を生み出し、多くの中国人を引き寄せている。

 取材班は、東京都心の池袋を離れ、次々と郊外にも広がり続ける新チャイナタウンの実像を追うことにした。