現在の支給額は遺族給付金が320万~2964万5000円、医療費などを支給する「重傷病給付金」が上限120万円、障害が残った被害者への「障害給付金」が18万~3974万4000円と決して多い金額とはいえない。
かりに犯人が求刑通り死刑となり、実際に執行によって命をもって「罪を償った」としても、被害者の受けた心の傷は終生癒やされることはない。
ふと、何かの拍子に、私はあの銃撃を受けた駅員とその母親の姿を思い浮かべることがある。
『検事の本音』(村上康聡 幻冬舎)
検事の仕事としては、取調べを行い、起訴して裁判所に送致すればそれで一旦は終了となるが、加害者であれ、加害者家族であれ、被害者であれ、被害者家族であれ、事件を境に否応なく厳しく重い人生や生活をスタートさせなくてはならない。
私自身が手がけた事件や事故はほんの一部である。
この世は不条理に満ちており、一寸先は予測不能であり、闇である。
これまで、事件、事故によって命を落とされた方々の無念さを思うといたたまれない。
かつてないほど混迷と不安の激しく揺れ動く今の時代、いついかなるとき、私たち自身が事故や犯罪の被害者になったり、あるいはいつのまにか闇バイトのような加害者に組み込まれないとも限らない。
私たちは、まずは被害者の気持ちを理解し、寄り添うことで、そこから自らの人生と生きる意味を見出さなくてはならない。







