特にその前年に行われた「琉球処分」などは、古代以来ずっと続いてきた中国を中心とする「華夷秩序」からの離脱を意味し、それまでの東アジアを統御してきた体系を根底から覆す、まさに日本の西欧的近代化を象徴する出来事であった。
同時期の北方でも、「北海道」の名が与えられたばかりの旧蝦夷地が、先住民であるアイヌの意向などお構いなしに大日本帝国の「植民地」として経営が着々と進められていた時期である。
明治30年代には函館から少しずつ延伸を続けてきた北海道鉄道（現函館本線）が、明治38（1905）年8月1日に小樽（現南小樽）駅でこの幌内鉄道に接続した。それをもって小樽（現南小樽）駅から手宮駅に至る区間は支線に位置付けられている。
南小樽駅。手宮線の起点である（同書より転載）。
政府の方針によって主要幹線鉄道が国有化された後、明治42（1909）年には全国の国有鉄道に線名が付与された。その時にこの支線は手宮線と命名されている。
長らく商港都市・小樽の臨港線として活躍し、明治末には複線化も行われた同線ではあるが、戦後は乗客数の減少で旅客輸送を昭和37（1962）年に廃止、さらに鉄道貨物の衰退に伴って同60年には全線が廃止された。
いまではポピュラーな「小樽」は
紆余曲折を経て生まれた駅名だった
この手宮線の起点・南小樽駅から、北の手宮へ向けて歩き始めよう。終点まで2.8キロと短いので観光のついでに散歩できる気軽さがある。
南小樽駅は開業時には地元の町名をとって開運町と称したが、なぜか開業翌年の明治14（1881）年には住吉と改称、さらに同33年には小樽駅（初代）になった。
それまで「小樽」を名乗る駅がなかったというのも不思議な話である。
