残業命令を拒否できるケースはある?

 例えば、妊産婦で残業免除を申請している場合、あるいは3歳未満の子どもを育てる社員が残業免除を申し出ている場合は法律で保護され、残業を拒否できます。

 また、病気など健康上の問題など、正当な理由がある場合にも残業を断ることが認められます。つまり、背景に「正当な理由があるか」がポイントです。

 なお、意外と見落とされがちですが、会社は入社時や契約更新時に労働条件を記載した書面を本人へ通知する義務があります。その中に残業の「あり・なし」は必ず記載されていなければならない事項なので、一度内容を確認してみるとよいでしょう。

 というわけで、Aさんの“花金クリスマスデート”は、残念ながら残業を拒否する正当な理由にまでは当たらないと考えられるでしょう。

 しかし、そもそも残業が常態化している多くの職場では、構造的な要因が潜んでいます。

残業は社員ではなくマネジメントの問題

 残業が常態化している職場の構造的な要因には、下記が挙げられるでしょう。

・慢性的な人手不足
・業務の属人化
・DX化の遅れなどによる非効率な業務フロー
・上司が帰らないと部下も帰れない空気
・業務成果より残業する人が評価される制度と価値観

 こうした職場は、健康障害やモチベーションの低下、生産性の低下、離職率の上昇といった悪循環を生みます。つまり残業の常態化は、社員個人の頑張りや能力で解決できる範疇を超えた、マネジメントの問題です。

 過去の成功体験や固定観念に捉われた、残業ありきの業務の進め方はいい加減終わりにしましょう。どうすれば所定時間内に終わる仕組みに変えられるか、まずこの視点に立つことが企業に求められます。

 企業がこの問題を放置すれば、企業も社員も疲弊し、社内崩壊を招きます。法令違反が相次いで発生し、ブラック企業というレッテルを貼られるなど、厳しい社会的評価を受けかねません。