その際、米中対立が激しくなるなか、米中がデータセンターの立地を奪い合う関係になる可能性があります。というのも、データセンターは大量の電力を消費するため、電力供給に不安定さがある国には向かず、安定した電力供給が必要となるからです。また、データセンターを保守整備する人材も必要となります。そうした場所と人材をどう選定していくのか、ということがこれからのAIを巡る問題の背景にあります。

 AIを支える何よりも重要なハードウェアは、大量のデータを処理するデータセンターです。そして最大の問題は、巨大な電力消費にあります。データセンターを新しくつくる地域を選ぶ際の決定的な条件というのは、実は電気だったりするのです。

 つまり、その地域にどのくらいの余剰電力があるのかということがとても重要になるということです。

 近年は特に環境問題への意識が高まっていて、火力発電でつくられた電気を使っている=CO2を排出していると見られてしまうことがあり、企業にとっては難しい問題となっています。そのため、例えばアマゾンなどの一部の企業は、CO2を排出しない電源を使ってデータセンターを運用したいというリクエストを出したりします。では、世界のどこにそのような電源があるのかというと、実は日本にある、というのが今のAIの世界での理解だろうと思います。

日本はその気になれば
電力供給の余力がある

 なぜそのような理解になっているのかというと、日本には再稼働できる原発があるからなのです。現状では、様々な事情で再稼働の認可が下りていないものもあれば、認可は下りているけれども地元住民の同意が得られていないもの、中には実際に再稼働しているものもあります。

 そこには眠っている余剰電力が確かにあって、もし原発の再稼働が進んでいけば、日本はデータセンターに求められる電力を供給できる国として見ることができるのです。本記事では、原発を再稼働すべきかどうかという重要な議論は中心的議題ではないので扱いませんが、事実そのように見られていることもあって、データセンターを日本につくることが今大きな話題となっているのです。