
2011年の東日本大震災以降、「核分裂」による原子力発電には賛否両論だ。こうしたなかで注目を集めているのが「核融合」である。もし実現が可能になれば、人類の未来が大きく飛躍するのだが……。※本稿は、二間瀬敏史『量子テレポーテーションで人間は転送できるか?やさしく読める量子力学』(さくら舎)の一部を抜粋・編集したものです。
量子力学によって解明された
「核分裂」と「核融合」の本当の姿
2011年3月11日に発生した福島の原発事故以来、人間が原子力を操る難しさとその危険性が強く認識されています。
現在の原子力発電で利用されているのは核分裂で生じるエネルギーですが、この方法ではそれに伴って遺伝子を損傷する危険な放射性元素が発生することを避けられません。また燃料であるウランやプルトニウムといった元素は自然界ではごく微量しか存在せず、いずれは枯渇することは免れません。
そこで1940年代からこれらの問題を解決する核融合反応を用いた発電の研究がおこなわれ、2050年代の実用化を目指して日々研究がおこなわれています。
核分裂=1つの原子核が、ほぼ同じ大きさの2つの原子核(核分裂片)に分裂すること
核融合=2つの軽い原子核が合体して、より重い原子核を作る反応
核分裂も核融合も、その反応過程で外部に大きなエネルギーを放出します。そしてこの2つとも、物質の構造が量子力学によって解明されて初めて、そのメカニズムが明らかになりました。
特に核融合は、星のエネルギー源を解明し天文学を大きく発展させたのです。