『「いつになったら成果が出るの?」と言うリーダーが、チームの足を引っ張る』
そう指摘するのが、400以上のチームを見て「人と協力するのがうまい人の特徴」をまとめた書籍『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)だ。「チームの空気が変わった」「メンバーとの関係性が良くなった」と話題の一冊から、その考え方について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「いつになったら成果が出るの?」と言うリーダーが、チームの足を引っ張る理由Photo: Adobe Stock

チームの前進を止める「ひと言」

 成果が出ないとソワソワする。
 新しい取り組みほど、「いつ成果が出るのか?」が気になる。

 その気持ち、よくわかります。

 しかし、この“焦り”こそが、チームの前進を止めてしまうことがあります。

 とくに、前例のない取り組みや、社外の人と進める共創プロジェクトではなおさらです。

『チームプレーの天才』という本では、こう指摘されています。

チームとしては一歩ずつ前進している実感があったとしても、ときに周りの視線が冷たく突き刺さります。「いつになったら成果が出るのか」「しっかりやっているのか」「いつまで見守ればいいのか」「そろそろ諦めた方がよいのではないか」と。
しかし、それでは新たな発想も育たず、イノベーションも生まれにくいでしょう。

――チームプレーの天才』(230ページ)より

 すぐに成果を求める言葉が飛び交うと、チームは委縮し、発想はしぼみ、イノベーションは生まれなくなります。

「生産性」には2つの種類がある

 焦りが生まれる背景には、「より短時間でより多くを生み出すことがいい」という思い込みがあります。

 しかし『チームプレーの天才』は、“生産性には2つの種類がある”と説明します。

・作業生産性(決められた作業を効率よくこなす世界)
・創造生産性(新しい価値をつくる世界)

 この2つです。

 前者は短期成果が求められますが、後者は違います。

 新しい人と出会う、未知の体験をする、試行錯誤を重ねる。

 そのインプットが実を結ぶまでには、時間がかかります。

 ですが『チームプレーの天才』には、こう書かれています。

それでもなお、そのインプットは決して無駄ではありません。多様な体験や実験、多様な人たちとの対話が意外な課題解決やイノベーションの種や芽になることもよくあります。
――チームプレーの天才』(234ページ)より

 そして、こうも指摘しています。

「創造性を高めよ」「新規事業を生み出せ」「付加価値を高めよ」「イノベーションせよ」などと言いつつ(言われつつ)、「早く成果を出せ」「(共創ではなく)外注して手っ取り早く進めろ」などとも言われていないでしょうか。作業生産性の世界の正義でジャッジされ、創造性をむしろ台無しにしていないでしょうか。
――チームプレーの天才』(235ページ)より

 創造が必要な場面で“作業生産性の正義”を持ち込むと、必ず失敗するのです。

リーダーは、どうすればいいのか?

 時間がかかる取り組みでも、

・チームの関係性が良くなった
・新しい視点が生まれた
・試してみたいアイデアが増えた

 こうした“変化”も立派な前進です。

 短期の結果だけに縛られず、変化という成長を評価する文化こそが、チームを強くします。

「いつ成果が出るの?」

 この問いかけは、チームを急かし、余白を奪う危険なサインです。

 焦るのではなく、変化を見つけ、変化を育てる。

 この姿勢こそが、イノベーションの土台になります。

(本稿は、『チームプレーの天才 誰とでもうまく仕事を進められる人がやっていること』の発売を記念したオリジナル記事です)