スズキでもダイハツでもない…日本の軽自動車の「レベルを爆上げ」したメーカーの実名【EU新規格でチャンス到来!?】Photo by Koichiro Imoto

時に「ガラパゴス製品」と揶揄される軽自動車が、実は今、欧州で大いに尊敬されている。EUは政治主導でEV化を進めた結果、クルマの値段が跳ね上がった。そこで出た案が、日本の軽自動車を参考にする新規格の「Eカー」だ。日本の軽は、小型ながら安全と快適性を両立させる技術力、低所得者層の負担を軽減する両面で高く評価されている。では、なぜ軽自動車はこれほど進歩したのか。【前後編の前編】(ジャーナリスト 井元康一郎)

欧州版の「軽自動車」が誕生へ

「新たなスモール・アフォーダブルカー(小型低価格車)イニシアチブを提案する。欧州には独自のE-Car(Eカー)が必要だ。Eは環境(environmental)、経済的(economic)、そして欧州(Europe)。これは手頃なクルマを求める欧州の消費者のニーズにとどまらず、今後予想される世界的な小型車需要の急増にも対応するものである」

 今年9月、欧州連合のトップであるライエン欧州委員長がこう発言した。欧州にとって小型車は得意分野だが、「Eカー」は単なるスモールカーではない。

 欧州の乗用車は、Aセグメント(おおむね全長3.7m以下)からFセグメント(おおむね全長5.1m以上)まで6段階にクラス分けされる。Eカーは、Aセグメントよりさらに小さい新規格の小型車。言うなれば「欧州版の軽自動車」なのだ。

 欧州は今、自動車政策を巡って混乱している。欧州自動車工業会の進言に耳を貸さず、政治主導で「オール電化」を強硬に推進してきた結果、クルマの値段が跳ね上がった。中でも価格が安く、コスト吸収力の小さいAセグメントは「根絶やし」のような悪影響を受けた。

 環境負荷が小さく、低所得層にとって買いやすいクルマを、このような状況に追い込んでしまったのは欧州政府の失態もいいところだ。

 とはいえ、グリーンディールの看板は簡単には下せない。欧州議会に議員を送る各国の意向はバラバラ。多大な影響力を発揮してきた環境NGO団体は、トランプ米大統領になってから軒並み大打撃を受けたが、それでも豊富な資金力をバックに隠然と勢力を維持している。