日本の軽自動車はレベルが違う

 実は、欧州が乗用車未満のクルマを作る構想を打ち出したのは、今回が初めてではない。市街地限定のL6、郊外もちょっと走れる能力を持つL7などの「クアドリシクル」を普及させようとしたことがある。

 が、それらは安全性が普通のクルマよりはるかに低く、用途も狭すぎるため、今日に至るまで主流になれていない。メーカー側も市場性がないということで参入は限定的だ。

 日本の軽自動車は、それらとはレベルが違う。4人がしっかり乗車でき、高速道路を走る能力があり、環境負荷は低く、大半のモデルがADAS(先進運転支援システム)まで標準装備している。

 最も偉大な点は、全長3.4m、全幅1.48mという限定された寸法で、厳しい衝突安全試験をクリアしていることだ。24年に欧州と同じ衝突速度、26km/h→32km/hへ引き上げられた側面ポール衝突(立ち木や電柱への衝突シミュレーション)に、たった全幅1.48mで対応している。

 もちろん、クラッシュ時の「潰れしろ」はサイズの大きいクルマに比べて短いので、あらゆる事故において同等というわけにはいかない。が、こんな小さいサイズで各種試験をクリアできているのは、日本の軽だけである。

なぜ軽自動車は進歩できたのか

 なぜ軽自動車はこのようなクルマになったのか。規格が現在の寸法、排気量になったのは1998年。この規格策定の途中までは、オフセット衝突(クルマ前部の全面ではなく一部をバリアにぶつける)の試験速度を、普通車の64km/hに対して軽は50km/hにする方向で調整していた。

 そんな中、突如ホンダが「軽でも64km/hのオフセット衝突に対応可能」と試作車で証明してみせた。ホンダの発表は当時、業界が協力して規格を作っているのを乱すと非難されたが、最終的には全メーカーがこの安全基準をクリアするに至った。

 つまり、ホンダのスタンドプレーがなければ軽自動車は進歩を遂げていなかった可能性が高い。車体技術の向上は、軽自動車全体を大きくレベルアップさせたのだった。

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