「練習しないでほしい」スタッフが高石あかりの怪談語りに要望→聞きやすくハイレベルだった〈ばけばけ第59回〉

高石あかりには「練習しないでほしいとお願いしました」

 ヘブンはすっかり怪談に夢中で、中学を休むと言い出し、トキを困らせつつ、しぶしぶ出かけていく。

「なんてすがすがしい朝だ。
すべての風景が変わって見える。
初めてこの国に来たときのことを思い出した」

 いつものヘブンの授業。彼の気持ちや近況を英語で話し、それを生徒が書き取っている。

 錦織(吉沢亮)はいつものヘブンの愚痴気味な内容でないことをいぶかしく感じる。

 ヘブンは正木清一(日高由起刀)に「昨日はありがとう」と礼を言い、聞き取りも完璧と褒める。

 錦織は正木に事情を聞き、怪談を聞いて泣いていたと知る。ますますいぶかしげな顔になる。

「怪談をいたく気に入ったご様子で、もっと他にも話を聞いてみたいと、怪談に詳しい方を探すつもりのようでした」

 正木は錦織にご注進する。

 ちみな。いや、ちなみに。授業中に小谷春夫(下川恭平)にヘブンはわざわざ声をかけるが、後ろ姿のみで、代役なんじゃないかと思うのだが、次のシーンでは、正木と錦織の弟・丈(杉田雷麟)と小谷がいる。

 ここではちゃんと顔が映っている。そういえば、丈の出番がまだ少ないが、そのうち見せ場があるのだろうか。たぶんあるのだろう。

 ヘブンは家に帰ると、また部屋中を暗くしてろうそく1本で怪談を聞く準備万端。

「人の命がろうそくよりもたやすく消えていく時代のお話でございます」とトキは「鳥取の布団」とは違う新たな怪談を語りだす。

 それは「子捨ての話」――。

「出雲の国の持田の浦という村のある百姓の夫婦はひどく貧しく、自分たちが食べるだけで精いっぱい、子どもが生まれる度に『ごめんよ、ごめんよ』と、全て家の裏を流れる川に捨てていました。

 しかし月日は流れ、ようやく暮らしに少しのゆとりが出てきた頃、初めて、生まれてきた子を育ててみることにしました。ある月夜の晩のことです」

 トキはワントーン高い、聞きやすい声で語る。臨場感がある。

 子守唄も歌う。とても澄んだ声だ。

 高石あかりの語りや歌はとても巧(うま)く感じるが、橋爪國臣チーフ・プロデューサーは、「練習はしていません。むしろ、練習しないでほしいとお願いしました」と言う。

「怪談に関しては講談師の四代目玉田玉秀斎さんに怪談ばなし指導として入っていただいていますが、現場には来ていただいていません。あらかじめ一度だけ高石さんに玉秀斎さんの怪談を聞いてもらっただけ。トキは語りのプロではないので、それにとらわれないでくださいというふうにお話しました」