支援もセットの「北欧モデル」とは?
「売春する人」の尊厳は守れるか

 まず、貧困から売春せざるをえない状況や、これ以外に仕事を選べない事情のある人に対して支援が行われずに買春規制だけ行われた場合への危惧である。

 買春を規制し、売春の状況にある人を保護する「北欧モデル」では、買春規制と、現在この仕事に就く人への支援や福祉の充実はセットであると考えられている。しかしそれが日本で実現可能であるのかどうか。

 現在の日本では、例えば生活保護受給に対する世間の風当たりが非常に厳しい。こういった風潮の中で、主に女性が多い売春をする人に対しての支援や福祉の充実に理解が得られるのかどうか。

 一方、売春をする人を偏見から守り、主体的にこの仕事をしたいと望む人のために、買春規制に反対の立場を取る人もいる。「北欧モデル」では、セックスワーカーの尊厳が守られることにはならず、違法とされることによって直接的な危険が危険が増えた、というのである。

「性の尊厳」という人間の生の根幹に関わる話であるだけに、少なくとも、望まずに性売買に従事する状況の人に対しては支援が行われるべきだが、生活保護の申請に行った役所の窓口で「風俗で働けばいい」と言われた、という話は今も聞こえてくる。性産業が「福祉」の顔をしていてはいけない。

 また、買春規制が法制化されたところで、現状がどれほど変わるのかという懸念もある。

「トー横」や「グリ下」での客引きに見られるような、一見個人間で行われているように見える売買春において「買う側」への牽制には多少なるかもしれないが、SNSのDMなどでの交渉は発見されづらい。

 性交類似行為の問題もある。売春防止法では「性交」が禁じられているが、風営法では「性交類似行為」が合法となっている。性交類似行為を行うという建前で、実際は性交が行われているケースが現在でも多々あると考えられるが、実質的にはほとんど野放しだ。

 買春規制で「性交」のみが禁じられた場合でも、これまでのように「性交類似行為」の建前で、いわゆる「本番行為」が行われ続ける抜け道は残るのではないか。