私はよく「もめごとはこやし」と言っていますが、子ども同士のトラブルは子ども同士で解決させることを基本にしています。

 経験を重ねることでしか、耐性はできないからです。学校や家庭で「ケンカをしてはいけません」「みんな仲良く」と教えたところで、現実にケンカは起こります。

 大人になれば、もっと陰湿でずるいことも起こり得ます。目に見えない戦いや、水面下での交渉、裏工作、足の引っ張り合い……。脅かすわけではありませんが、何が起こるかわからない世の中です。子どものときのように、お母さん、お父さんが守ってあげることはできません。

 これからは、強さだけではなく、理不尽な中でも平気でやっていける、ある種の「鈍感力」も必要です。ケンカに勝つことだけが正解ではない時代です。

 AI時代を生き抜く立ち回り方を知るのもまた、経験でしかないのです。

将来、差がつくのは、目先の勉強より「思考力」「べき力」「ハカセ力」

「うちの子は4歳でひらがなが全部書けるようになりました」
「5歳で計算ができるようになりました」

 こんなふうに喜んでいる親御さんがいます。

 うれしい気持ちはわかります。字が書けることや計算ができることは勉強の土台となる大切なこと。でも、それは人より少し早くできるようになっただけ。いずれは多くの子ができるようになり、追いつかれてしまうことですよね。

 それよりもっと大切な、育てたい力があります。それが、将来差がつく「思考力」「べき力」「ハカセ力」です。

 1つめの「思考力」は、以前から言ってきた、図形の補助線のような見えるイメージ力や、最後まで論理的に考え抜くような詰めて考える力です。

 2つめの「べき力」は、やるべきことをやる力。頭のいい子たちは、この「べき力」を小馬鹿にする傾向があります。実は私も少し前まで「べき力」を重要視していませんでした。でも、やるべきことをやる力を育てることこそが、教育の根幹だということがわかってきたのです。