生成されたのは、『昼下がりの散歩道』というタイトルの一曲。あまりに手順がシンプルなので、半信半疑の気持ちで再生ボタンをタップしてみる。すると実にプロっぽい、軽やかなイントロが流れ出した。

 驚くべきは、歌詞までしっかり完成しており、何者かの歌声でムードたっぷりに歌い上げられていることだ。もちろん、この歌声はAIが生み出したものである。

 一応、物書き稼業を生業とする筆者の目にも、詞としてとくに矛盾もなく、「窓に揺れるカーテンの影」「風が運ぶ静かなささやき」「コーヒーの香りが夢を呼ぶ」などと耳障りのいいフレーズが歌唱されている。

 この10秒ほどの所要時間で、しっかり1曲分の詞とメロディが完成しているのだから恐れ入る。あらためてAIのポテンシャルを思い知らされた。

ChatGPTとタッグを組んで
クオリティを高めることも

 では、ちょっと難題をぶつけてみよう。今度は筆者の趣味のひとつである「ボクシング」という、そのままではおよそ音楽とは結びつかない単語を入力し、ついでに歌唱の声を男性に指定して生成してみた。

 すると、やっぱり10秒ほどの短時間で、「ボクシングの夢」と題された曲が仕上がってきた。名曲であるかどうかはさておき、曲調も歌詞も何やら勇ましくて、実にそれっぽい。

 これだけ不親切なプロンプト(指示)から、一体どんな世界観がひねり出されたのかと疑いつつ歌詞を追ってみると、「拳が語る真実のドラマ」とか「英雄たちが生まれる夜」などと、ちゃんと競技性が盛り込まれている。

 これまで曲作りなど無縁だった身ゆえ、面白いおもちゃを手に入れたようでテンションが上がるが、逆にいえば、こうしたAI活用においてはいかにプロンプトを工夫するかが腕の見せ所ということなのだろう。

「おっしゃる通りで、具体的な説明文や単語を追加していけば、さらに好みの曲調に近づけていくことができますよ。たとえばギターの音を中心にしたり、歌詞を付けずインストゥルメンタルで仕上げたり、何でも思いのままです」

 バーバラさんによれば、よりハイクオリティな曲を作るためのプロンプトを「ChatGPT」に作成してもらい、それを「Suno」に入力する上級者もいるというから、凄い時代だ。

 なお、こうしたツールは「Suno」以外にもたくさんリリースされている。

そりゃプロも焦るわ…「音楽知識ゼロ」がAIで10秒作曲、その驚きの“結果”とは「ボクシング」と一言入れただけで生まれた曲 Photo by Satoshi Tomokiyo