最終回か。そうじゃない。

 主題歌の流れるなか、トキとヘブンは宍道湖を散歩。

「今夜も散歩しましょうか」のあと。しんと静寂。

 静かな波の音。このシーンだけ宍道湖ロケとのことで、波の音が穏やか(例えば琵琶湖の音はもっと荒い。ただそのリアルな音を使用しているかは不明)。

 ヘブンが手をさしだし、トキがはにかみ、やがて手をつなぎふたりは歩き出す。

 残ったのは、美しい夕日。

「最初から13週あたりで2人が結婚して、夫婦の物語をはじめようと計画していましたが、明確に年末最後にふたりが結ばれる回になるとは予想していませんでした。年末年始の休みの前にあまりに美しく終わったので、終わりだと思わず、新年からもちゃんと見てください。新年に続きますと記事に書いてください(笑)」と制作統括の橋爪國臣さんは心配して念を押した。

 話の腰を折るようでなんだが、ヘブンというか小泉八雲は丁寧に世話してくれる人を速攻選んだのだと筆者は超現実的に考えている。そこにロマンは介在していない気がする。身の回りの世話をしてくれて研究材料である怪談にも詳しい、日本の武家の出であったがいまは民衆なんて境遇のトキは最適すぎる。研究者ってそういうもんだと思う。

 そう思わないと、銀二郎とイライザが可哀想(かわいそう)すぎるから。

 銀二郎なんて、前日、同じ湖でトキに「やり直そう」と言っているのに、その翌日、トキは同じ湖でヘブンと幸せをかみ締めあっているのだから、やりきれないだろう。ヘブンへのねっとり視線や行動をはじめとして、なかなかトキがちゃっかりして見えるが、元々は銀二郎が理由はもっともとはいえ東京に逃げてしまったのが悪かったわけだが。つまり4年前に終わっていたのである。仕方ない。それにまあ銀二郎とイライザならすぐに幸せが見つかるだろうけれど。

 2025年の『ばけばけ』レビューはこれで終わりです。2026年は1月5日から通常どおりです。

「台本に涙を流すとは書いていない」のに涙した高石あかり、現場がカメラを止めなかったワケ〈ばけばけ第65回〉
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