
「私も ごいっしょしてええですか」
それから、ふたりは花田旅館へ。そこにはトキと銀二郎がいた。
イライザと銀二郎は隣の部屋に宿泊していた。
別れ際、ハグするヘブンとイライザをじっとり見つめるトキ。
トキとヘブンは旅館を出て、しばし話す。橋のたもとで、別れがたいが、橋を渡っていくトキ。
振り返ると、ヘブンも振り返る。
笑いあって、ヘブンは帰宅していく。
取り残されたトキ。ふふふ、え〜、と笑う。涙が出るのを誤魔化(ごまか)すように笑う。
このシーンのことをチーフディレクターの村橋直樹さんはこう語っている。
「瞬発力もあるけれど、時間をかけると深いものが出てくる」
「そのためカメラをずっと回している」
「長くカメラを止めなかったシーンがこれまで2つありました。1つは、第31回、三之丞(板垣李光人)に嘘をついてお金を渡し、洋妾になる決意をして川べりを歩くシーン、もう1つは、第65回の橋の上で涙を流すシーンです。台本には涙を流すとは書いていないし、僕も具体的にここで泣こうというようなことは高石さんに言っていません。ただ、『ヘブンが何も言わずに去った後、トキは何を感じるだろうね』ということと、『僕はカットをずっとかけないからね』とだけ言いました。本編で使っている涙のカットまでに10分と言ったら大げさですけれど、3分くらいかかっているかな。高石さんは、演じながら、『私(トキ)、ヘブンさんが好きだったんだ』と気付いたと言っていました」
花田旅館では、イライザが銀二郎の部屋を訪れ、「私とあなたは一緒ね」と慰め合う。
銀二郎は涙目で「はい」。言葉はわかっていないはずなのに、気持ちが通じている。
もしも、ここでふたりが――なんてことになったら怪談より怖い。
第65回は、大事なところでほとんど言葉を使っていない。英語も多いし、耳で聞いているだけでは理解できない。副音声がどうなっているか気になる。
銀二郎は松野家に諦めると言いに行く。トキを愛しているけど諦めるというので松野家は戸惑うばかり。
トキは何も言えない。
翌日? ヘブン宅に向かうトキ。橋をおりるとヘブンがいた。
イライザも銀二郎ももう旅立っていた。もしもふたりが手をとりあっていたら、怪談より怖い。
散歩に行くというヘブンに、トキは思い切って、「私も ごいっしょしてええですか」。
「はい」とヘブンの返事を合図のように、主題歌がはじまる。
クレジットが流れる。いつものタイトルバックのような写真はなく、画面が真っ白だ(真っ白い画面でクレジット)。
12分50秒の長いアヴァンというよりは今回はエンディングである。







