小谷:そのとおりです。2007年1月にアルダーシル・ホセインポー博士がイスファーハンの核技術研究所で放射性ガスを浴びて死亡したことを皮切りに、その後も立て続けにイランの核物理学者たちの不審死が連続しており、2020年までに7名が殺害されたと見られています。

 そのなかでも、モスタファ・アフマディローシャン博士は2012年1月に走行中の車内で爆殺され、モフセン・ファクリザデ博士も2020年11月に同じく走行中の車内で射殺。これらの殺害工作にはモサドの関与が疑われています。

あらゆる手を尽くして
妨害工作を働くイスラエルの執念

小谷:さらに、2010年には、アメリカとイスラエルで共同開発されたとの噂のコンピュータウイルス「スタックスネット」が使用され、イラン・ナタンズ核開発施設のウラン濃縮用遠心分離機8400台が破壊されています。

 このウイルスは極めて高度なもので、遠心分離機を制御するシーメンス社製のプログラムにしか作用しないようにつくられています。このウイルスによって、初めてIoT、つまりコンピュータウイルスによって物理的破壊をもたらすことになります。

 ナタンズの核施設には、建設当初から地下に爆薬が仕掛けられていたようで、2020年、21年にも起爆されており、イスラエルがいかにイランの核開発を警戒していたかがうかがい知れます。