中東のリーダーになるために
裏で暗躍するイラン
小泉:そのイスラエルにとって、最も深刻な脅威はイランでしょう。2025年6月には、イスラエルがイランを攻撃し、アメリカも地中貫通爆弾「バンカーバスター」を使用してイランの核施設を空爆しました。その後、アメリカの調停によってイスラエルとイランは停戦合意を結びますが、いつ停戦が破綻してもおかしくない状況です。
そもそも、なぜイスラエルはそこまでしてイランを敵視しているのですか?
小谷:イスラエルにとってイランは「最後に残った敵」と言えます。建国当初からイスラエルと敵対関係にあったアラブ諸国は、四度の中東戦争を戦ったエジプトをはじめとしてヨルダン、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンなど、すでにイスラエルと和解しています。
サウジアラビアはイスラエルと国交はなく微妙な関係ですが、実質アメリカの傀儡のようなもので、イスラエルを敵視するまではいかない。カタールやオマーンも水面下でイスラエルとの関係を維持している。
残った「ラスボス」がイランです。1979年のイラン・イスラム革命以後、イランはイスラエルを「イスラム世界の敵」「不法な占領国家」として“根絶すべき存在”と位置づけています。また「アラブ諸国の盟主」「イスラム世界のリーダー」をめざしている。
イランはアラブ諸国のなかでは少数派のイスラム教シーア派で、実力でイスラエルを叩けば他のスンニ派諸国への強力なアピールになり、中東一帯はイランの影響下になるという目算なのでしょう。
そこで、レバノンを拠点に活動する武装組織ヒズボラ、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスに対して資金援助や武器・技術供与などさまざまな支援を行ない、自分の「代理」としてイスラエルに頻繁に攻撃を仕掛けてきたわけです。
サウジもエジプトも抑えた
イスラエルのアキレス腱
小泉:言わば「交番に石を投げたヤンキーがヒーローになる」構図ですね。
小谷:まさに。ヒズボラを使ってイスラエルを攻撃すれば、イランは中東の若者から支持されるわけです。







