「世間にはよう言わん」息子の同性愛を認められなかった母が「100%受け入れられる」と確信した出来事写真はイメージです Photo:PIXTA

先日、中野で上演された舞台を観劇し、原作者 兼 脚本家と、その母にインタビューするという機会があった。舞台のテーマは「同性愛カップルの結婚」だ。京大生であった自慢の息子からカミングアウトを聞いた当時、母は「自分の育て方が悪かったのでは」と自分を責めたという。息子とそのパートナーの“夫夫(ふうふ)”に対する母の思い、そして、LGBT(Q)への理解を求め、同性愛者である自分の人生を本に書いた男性弁護士の葛藤とは。(コラムニスト 河崎 環)

「私、息子にカミングアウトされました」

 11月19日~24日、中野のテアトルBONBONで上演された劇団朋友「カラフル」が、満員御礼で千秋楽を終えた。

「カラフル」は、同性愛者として社会のど真ん中を歩いていこうと決めた「弁護士夫夫(ふうふ)」が辿ってきた事実に基づく舞台だ。原作は南和行と吉田昌史のエッセイ『僕たちのカラフルな毎日 ~弁護士夫夫の波乱万丈奮闘記~』(産業編集センター)。舞台脚本は、後述する紆余曲折を経て、南自身が執筆した。

 京都大学でお互い大学院生として出会った南和行と吉田昌史。南は農学部大学院を経て民間企業へ就職、一つ年下の吉田は法学部大学院で研究者コースに進学する。しかし吉田が体調を崩して大学院を休学。弁護士であった父親を亡くした南は、ゲイであることを隠したままでも二人で生きていく解決策として「一緒に弁護士になろう」と吉田を誘い、共に法曹の世界へと進む選択をした。

「二人で弁護士になれば、『ゲイだ』とか『恋人同士だ』とか世間に言うことはできなくても、人生を共有できる」(『僕たちのカラフルな毎日』より)

「世間にはよう言わん」息子の同性愛を認められなかった母が「100%受け入れられる」と確信した出来事劇団朋友の舞台「カラフル」(提供:劇団朋友)

 共に大阪市立大学ロースクールへ通い、司法試験に挑戦。吉田が先に全国8位という優等な成績で合格、追って南も合格した。大阪で弁護士事務所を設立し、晴れて弁護士カップルとなった二人だったが、その背景には家族や親しい者へのカミングアウトと、自分たちを囲む社会に向けて結婚式を挙げ、夫夫(ふうふ)と名乗れるようになるまでの大きな葛藤があった。

 劇は、南の母ヤヱが息子のカミングアウトを拒絶し、「あなたは同性愛なんかじゃない」「女の子とつきあえばそのうち同性愛なんて“治る”から」と激しく否定、「息子が同性愛だなんて恥ずかしい」「私の育て方が悪かったから同性愛者になってしまった」と自分を責めるところから始まる。

 そして10年以上をかけ、ヤヱは二人のあり方を受け入れて家族となる。「人に言えない」との心理的抵抗から留袖は着られなかったなりに、夫夫(ふうふ)の結婚式へ出席。「私の息子たち」への祝福をたくさんの列席者と分かち合えるようになるまでの物語だ。