「13本ダイヤ」を
いかにして実現したのか

 東海道新幹線は2020年3月のダイヤ改正で、それまで最大毎時10本だった「のぞみ」を2本増発し、「12本ダイヤ」を導入した。当時、ダイヤ担当者を取材して苦労を聞いていただけに、さらなる増発が実現したのは驚きだった。

 12本ダイヤ実現のカギは東京駅の発車間隔をどれだけ短縮できるかにあった。東海道新幹線東京駅を発車する列車は、最大で1時間当たり「のぞみ」12本、「ひかり」2本、「こだま」3本、回送列車3本の計20本が運行されている。これを3本のホームと6つの線路を使い、平均3分間隔で折り返さねばならない。

 2020年3月改正で旧型「700系」が引退し、全ての車両が加速力に優れた「N700系Aタイプ」に統一されたことで、列車間隔の決定因子となる「ホームから出発し複数の分岐器をわたって下り線路に入るまでの時間」が短縮されたが、それだけでは2本の増発は不可能だった。

 そこで分岐器に転換指令を出してから実際にポイント転換が完了するまでの「空白の時間」に着目した。

 従来はポイントの転換が完了し、列車が出発可能であることを示す「開通表示灯」が点灯してから発車ベルを鳴らしていたが、制御装置がポイント転換の指示を出したことを知らせる「開通予告表示灯」を東京駅に新設し、開通予告表示灯が点灯したタイミングで発車ベルを鳴らし、発車までの間に分岐器を転換する仕組みに変更した。このような小さな積み重ねで何とか生み出したのが12本ダイヤだった。

 そうした中、どうやって「13本ダイヤ」を実現したのかJR東海に聞くと、やはりネックは東京駅などターミナルでの折り返しだったようだが、「パターンダイヤの見直しや各列車の運転時刻、各駅での待避方法、ホーム番線の使用方法について検討を重ね、実現に至りました」と説明する。

 現行ダイヤでは東京駅発7~18時台は「ひかり」「こだま」が30分間隔で、定期「のぞみ」が4~7本、最大で12本まで設定可能なパターンダイヤを採用しているが、新ダイヤでは増発する時間帯の「ひかり」の発時刻を変更し、あえてパターンを崩すことで、先行する「のぞみ」に3分後に続行する列車の設定が可能になった。

 新ダイヤでは「ひかり」「こだま」の発着時刻、待避駅が変更され、この影響で東京~豊橋間の一部「ひかり」は、下りは2分、上りは3分ほど所要時間が延びるが運行本数に変更はなく、全体の影響は軽微とのことだ。実際、終日の「ひかり」「こだま」の平均所要時間は短縮されるという。