空き家放置で生じる
2つのリスク

 相続空き家の放置にデメリットがあることは漠然とイメージできるかもしれないが、具体的にどんなリスクがあるかご存じだろうか。

 空き家の放置はさまざまなリスクが生じる。一つは相続人自身が負う「経済的・法的リスク」、もう一つは地域社会に及ぼす「環境・安全上のリスク」だ。

(1)経済的・法的リスク
 空き家を放置すると、毎年の固定資産税などの税負担が発生し続けることになる。さらに、老朽化した建物が「特定空家等」に認定されれば、「空家法」に基づき行政からの指導・勧告・命令の対象となり、修繕や解体を求められることがある。従わない場合には、過料や行政代執行による解体費用の負担といった行政上のペナルティが発生し得る。

 法的なリスクとしては、落下物や倒壊などで第三者に損害を与えた場合に、民法上の損害賠償責任を負う可能性がある。

(2)環境・安全上のリスク
 人の気配がない建物は、不審者の侵入や放火、ゴミの不法投棄のきっかけとなりやすく、周辺の防犯・治安を悪化させる要因となる。

 また、雑草の繁茂や建物外観の荒廃によって景観や衛生環境が損なわれれば、近隣住民の生活環境や資産価値にも影響を与えかねない。そのような状態が続けば、近隣住民の心理的な負担も大きくなり、トラブルに発展するおそれもあるだろう。

 このように、空き家を放置することは、所有者と地域社会の双方にとって負担を増やしていく行為であるといえる。

売却時における譲渡所得税の
3000万円控除が使えないおそれも

 相続した家を空き家のまま保有し続けた場合の税負担として、真っ先に思い浮かぶのが「固定資産税」だろう。地域によっては「都市計画税」も課税される。誰も使用していないにもかかわらず、納税し続けなければならないうえに、条件によっては税金が減額される特例が適用されず、結果的に税負担が増加する場合もある。

(1)固定資産税の負担増
 住宅が建っている土地は、通常「住宅用地の特例」により固定資産税の課税標準が軽減される。200㎡以下の小規模住宅用地なら6分の1、それを超える部分も3分の1として評価される仕組みだ。相続後に空き家になっても適切に管理されていれば、原則としてこの特例の対象となる。

 一方で、住宅を解体して更地にすると特例の対象外となり、課税標準が本来の水準に戻って税負担がかなり大きくなるため、一見すると、空き家のまま保有する方が「お得」に見えるかもしれない。

 しかし、空き家であっても建物を維持するための最低限の管理や修繕には、一定の手間と費用がかかる。居住するために必要な管理を怠っているなど「今後、住む予定がない住居」と判断されると特例の対象外となる場合もあるため、最低限の管理は必要となる。

 加えて、老朽化が進めば「倒壊のおそれ」「衛生上有害」など環境・安全上のリスクが高まり、「特定空家等」または「管理不全空き家等」として勧告を受ける可能性もある。勧告を受けた場合は、住宅用地特例の対象から除外できるとされており、その場合、固定資産税が本来の税額に戻される。

 空き家を維持する限り、固定資産税は必ず毎年発生する。加えて、管理状況によっては特例が外れ、税負担が重くなる可能性があることは押さえておきたい。