法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識#5Photo:PIXTA

国内の空き家が900万戸と過去最多だ。増え続ける空き家問題に対応するため、2023年12月に空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)が改正され、新たに「管理不全空き家」が導入された。相続した実家を放置したままだと固定資産税が6倍になるリスクもある。特集『法改正で知らない間に損をしない!相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#5では、実家や空き家に関わる最新ルールのポイントをお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

空き家が900万戸と過去最高に
放置に厳しいペナルティーの法改正

「空き家を放置しては駄目だという意識の高まりを感じている」

 こう語るのは、空き家問題に取り組むNPO法人空家・空地管理センターの上田真一代表理事だ。上田氏によれば、これまでは実家を相続してから数年たった空き家についての相談が多かった。

 しかし最近は、親が老人ホームに入る予定があるなど、相続前や空き家になる前の実家についての相談が増えており、「相談時期が前倒しになっている」(上田氏)。

 全国各地で空き家が増え続けている。総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年の空き家数は900万戸で、前回調査(18年)から51万戸が増えて過去最多となった。1993年の空き家数は448万戸だったため、この30年で空き家は倍増しているのだ。

 また、総住宅数に占める空き家の割合も23年は13.8%と過去最高となり、住宅の約7分の1を空き家が占める事態となっている。

 この統計調査の空き家は、借り主や買い主が見つかることを待っている賃貸用・売却用の住宅や、別荘で使うため普段は人が住まない空き家も含んでいる。もし空き家が増えていたとしても、こうした管理された物件ならばそれほど問題にはならないだろう。

 しかし今増え続けて問題となっているのは、誰も住まなくなって放置された空き家だ。賃貸・売却用や別荘などを除いた「その他の空き家」の数は、93年は149万戸だったが23年は385万戸と約2.6倍に増えた。空き家のうちの約4割は放置されているのだ。

 そして国土交通省の空き家所有者実態調査によれば、空き家の取得経緯の約55%は相続と、半数以上を占めている。相続の件数が増え続けている今、放置された空き家の数が今後も増えていくことはほぼ確実だ。

 この問題に対処するため、政府は15年に空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)を導入した。それでも空き家の増加を食い止めることができなかったため、23年12月に改正空き家法が施行され、ペナルティーをより厳しくした。

 今回の改正について、「空き家の放置は許さないという内容だ」と上田氏は警鐘を鳴らす。

 空き家放置のペナルティーの一つに、固定資産税が6倍になることがある。

 次ページでは、実家の空き家に手を打たないままだと損をしてしまう状態を避けるための、空き家法の改正のポイントとその対策の“新常識”を解説する。