(2)譲渡所得税の3000万円控除が使えない
 相続した空き家を将来売却する場合、その売却益には譲渡所得税(所得税・住民税)がかかる。しかし、一定の要件を満たすと、売却益から最大3000万円までは税金がかからない、いわゆる「空き家の特例」を使うことができる。金額が大きくなりやすい不動産の売却において、利用を検討したい制度の一つだ。

 しかし、この特例を使うには「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、譲渡すること」という期限要件を満たさなければならない。言い換えると、空き家を「どうするか」を決めないまま長期間放置していると、3000万円控除を使えなくなるおそれがあるということだ。

 このように、相続した家を空き家のまま放置していると、毎年の固定資産税負担が続くだけでなく、本来であれば利用できたかもしれない税制上の特例を逃し、結果的に税負担が重くなる可能性がある。

相続が発生してからでは遅い!?
生前に確認しておきたい3つのこと

 国土交通省の調査によれば、空き家所有者の77%が相続前に何らかの対策を行っておらず、相続後に「何もせず空き家として所有し続けている」割合が対策済みの空き家の約1.5倍に達している。つまり、生前の段階で方針を決めていないと、相続後に空き家を放置してしまう可能性が高くなるということだ。

 実家を「放置空き家」にしないためには、生前から家族間で相続時の対応について話し合っておくほうが賢明だ。ここでは、話し合いの際に押さえておきたい3つのポイントを紹介する。

(1)家をどうするかの方針
 相続後に「売却する」「貸す」「空き家のまま保有する」といった大まかな方針だけでなく、できる範囲で具体的な想定も共有しておきたい。

・売却する場合
 家を解体して更地として売るのか、建物付きのまま売るのか、といった選択肢がある。

・貸す場合
 建物をそのまま貸すのか、解体して土地だけを貸すのかを検討することになる。

・空き家のまま保有する場合
 維持管理を誰がどのように行うのか、将来的に家族の誰かが住む可能性があるのか、活用の余地はあるのか、といった点を話し合っておくとよい。

 なお、「貸す」という選択を検討する際は、「住宅セーフティネット制度」「マイホーム借上げ制度」など、公的な制度も確認しておきたい。

 たとえば住宅セーフティネット制度は、低所得者や高齢者、被災者などの安定した居住促進を目的とした制度で、セーフティネット住宅として登録することで、一定の改修費用について補助を受けられるなど、大家側への支援措置が用意されている。