(2)相続登記義務化を踏まえた「名義」の整理
2024年4月から、不動産の相続登記は法律上の義務となった。原則として「相続を知った日から3年以内」に登記をしなければならず、正当な理由なく登記を怠った場合には過料の対象となる。
その意味で、生前の段階から次の点を検討しておくことが重要になる。
・どの不動産を誰に相続させるのか
・遺言書を作成するのか、遺産分割協議の方針をどうするのか
あらかじめ方向性を共有しておけば、相続発生後の相続登記を円滑に進めやすくなり、「名義が親のままの空き家」が長期間残る事態も避けやすくなる。
(3)税負担を抑えられる特例の確認
先述の通り、空き家相続の場合「住宅用地の特例」や「空き家の特例」など、税額を軽減できる特例がある。実家が特例に適用されるか、特例を使う場合にはどうすればよいのかについて事前に確認しておきたい。
・住宅用地の特例(固定資産税)
固定資産税の納税通知書だけでは分かりにくい場合もあるため、必要に応じて市区町村窓口で「住宅用地特例(小規模住宅用地)の適用状況」を確認しておくとよい。土地の面積や区画ごとの内訳を把握しておくことは、将来の相続や売却を考えるうえでの土台になる。
また、誰が相続するのか、相続後どのように利用・保有するのかによって適用可否が変わるため、少なくとも「誰が引き継ぐ前提にするのか」は事前に整理しておきたい。
・空き家特例(譲渡所得の3000万円控除)
適用期限や要件は税制改正で見直されることがあるため、実際に利用する段階では最新の国税庁資料で確認する必要がある。まずは「期限がある」「条件がある」という枠組みを知り、「どう相続するか」「いつ売るか」によって、税負担に差が出る可能性がある事実を家族で共有しておくことが大切だ。
そのうえで、遺産分割の仕方を決める前に専門家への相談をおすすめしたい。本来適用できたはずの特例が使えなくなることもあるからだ。税理士であっても判断が分かれる場面はあり得るため、空き家特例や土地の相続に詳しい専門家に相談できると、より安心だ。
国や自治体は「空家等対策特別措置法」や「相続登記の義務化」などを通じて空き家対策を強化しており、空き家を長期間放置しづらい制度環境になりつつある。
先に見た国土交通省の調査でも、生前に対策をしているかどうかで、相続後の空き家の扱いに明確な差が出ていた。「親が元気なうちに話しておく」ことが、相続空き家を生まないための最も基本的な対策といえるだろう。







