デンマーク人の結婚観
私が通うビジネスデザインスクール「カオスパイロット」で秘書をしているマリーナさんに話を聞きました。国内外のプロジェクトに取り組み、3年間ある意味カオスな学生生活を送る中で、マリーナさんは私たちにとって安心して頼れるオアシスのような存在です。
そんなマリーナさんは、6歳の息子と2人目の子どもを妊娠していますが、パートナーがいるものの結婚はしていません。結婚していない理由について聞くとこう答えます。
「結婚するかどうかは重要ではないの。未婚か既婚かで社会は私たちを判断することはないわ。子どもがいることの方が大切で、それが私たちの絆を深めるの。結婚とは他の人に見せるための表面上のことに過ぎない。毎日感じる愛の方が結婚のための書類やセレモニーよりも重要なのよ」
また13歳のときに出会って以来、11年間彼女と交際している友人のサイモンさん(26歳)にも話を聞きました。彼は6年間アパートを借りて同棲したあと、去年ローンを組んで一軒家を購入しました。周囲からみれば、11年間交際して家まで購入するのであれば、当然結婚することを期待される仲でしょう。
ところが、サイモンさんと彼女は、彼女が大学を卒業したら子どもを生む計画を立てているにも関らず、今後結婚する予定はまだないと言います。何歳で結婚したいと考えたことはある?と聞くと、「それは自分にプレッシャーをかける馬鹿げた考え方だと思う」とはっきり彼は答えます。
「30歳になったら結婚しなければいけないなんて、そんな風に実際物事は進まない。大きなプレッシャーだし、ひどいことになる。結婚は、外の世界に対して見せるもの。僕は、それなしでもコミットできるとわかっているんだ」
彼女との関係についての満足度を10点満点で評価すると、満点だというサイモンさん。彼女と良い関係を築く上で大切なことは何か聞いてみました。
「お互いに幸せであること。朝、起きたときに幸せだと感じること。他人が自分たちのことをどう考えているかと思わない。自分が置かれた現状にまずは幸せを感じることが大切なんだ。他人が何を考えているかなんて考えると、人生が台無しになってしまうからね」
連載2回で、「デンマーク人は本当に幸せなのか?」というタイトルの記事を書いたときに、デンマーク人は他人と比べることで幸せを感じるのではなく、自分自身の価値観で幸せを感じていると書きました。その価値観が、恋愛にもゆるぎないものとして表れていたのです。結婚するかどうかは、個人の意思が尊重される自由がデンマークにはあるのです。