性格重視のデンマーク人の出会いの場

 デンマークでは、高負担の税金で小学校から大学までの教育費や医療費が無料になり、ある程度の生活が国によって保証されています。そのような状況があるからか、パートナーには経済力以上に、性格を重視する人が多い印象を受けます。

 男女が出会う場も性格がよくわかる場所が好まれているようです。「ランニングディナー」というデンマーク人の間で人気の男女の出会い系のイベントを立ち上げ、現在デンマークで注目されている女性起業家のミシェル・ビッドさんに話を伺いました。

 ミシェルさんのアイディアで始まったランニングディナーはレストランや決まった会場があるわけではありません。事前に申し込んだ人々が、ホストとゲストの役割を持ちます。

 ホストは8人の男女が集まって食事をする場所を提供します。ゲストは、事前に参加登録した情報をベースにマッチングされた相手とファーストコース、メインコース、デザートのいずれかを用意し、ホストの家に一緒に向かいます。

 それぞれのコースを提供する場所が決まっているため、一度のイベントでペアになった人と一緒に合計3軒のホストの家をまわり、それぞれで新たに新しい3組のペアの人と出会うことになります。

 ランニングディナーでは、ペアになった人と一緒に買い物に出掛けて料理をします。出会ったこともない人とこういったことをするのは、日本人からすると不思議な感覚です。

 プライベートな環境であるものの、会話を楽しみながら早くお互いを知ることができるのが人気の理由のようです。それにしても、これは共食の精神のあるデンマーク人らしい出会いの場だと感じました。

 ミシェルさんによると、ランニングディナーに参加する上で絶対必要なのは、「オープンマインドであること」。ちょっとした立ち話がその場でできるかどうかがポイントだそうです。私も時々パーティーに出掛けることがありますが、ヨーロッパではユーモアのある会話ができるかどうかがとても重視されているように思います。

 充実した福祉制度のあるデンマークでは、皆が中流階級だと言われています。肩書きよりも中身が重要視されます。会話の中で教養や頭の回転の良さを感じてもらうことが、素敵な人とさらに仲良くなるための重要なステップであるといっても過言ではないでしょう。

 ランニングディナーは、28歳から42歳の男女が集まり、多いときは一度のイベントで1000人ほど参加するそうです。成功を収めたミッシェルさんですが、実は過去に2度起業してどちらも上手くいかず、プライベートでは離婚も経験しています。過去の失敗を隠すことなく、そこで学んだこと、幸福とは何か語ったミシェルさんの本は、デンマークではベストセラーです。

 そんな彼女に結婚とは何か聞いてみると、「たくさんの愛、尊敬、優しさ」であると言います。「それが一つ、二つと長い間欠けていると、もうそこにいることはないわ」と言います。つまり、そのときは別れを選択するようです。

 パートナーと幸せになるためのモットーを聞いてみました。「常に私たちには選択があることを覚えておくことよ。自分の今のあり方に幸せでないと感じるのであれば、それを解決するための選択肢はいくらでもある。同じことに2週間も文句を言ってはだめ。もしそうするなら、変化を起こさなくてはいけないの。

 アインシュタインは、“狂気とは、同じことを何度も繰り返しているだけなのに、違う結果を期待することである”と言ったわ。多くの人が、朝起きて仕事に対して幸せでなかったり、妻にキスしたいと思わない人がいる。彼らは、自分に選択肢があること、そしてその選択肢に責任があることを忘れていると思うわ。

 私は正しいことを選んだのではないの、自分にできるベストなことをやってきただけ。嫌なことは起きるけど、それでもまたトライしてみることが大切なの」