優れた肉体と才能を持つ若者が、ビッグマネーを手にする。それ自体はエキサイティングで、素晴らしいことだと思う。一方で、稼ぎに憧れるなら、アスリートよりも、アスリートビジネスを目指す方が確実じゃないか?と若者には伝えたい。

 今の若者は知らないかもしれないけれど、僕はかつて、プロ野球の球団を買収しようとした。いろいろあって頓挫したのだけれど、次は新しいプロ野球球団を設立しようと乗り出した。2004年のことだ。

 選手とフロントは自前の人脈で集め、本拠地はプロ野球チームのなかった仙台に置こうと決めた。当時の僕は、プロ野球のビジネスに関わっているわけではない、30歳そこそこの若手経営者だった。

 いわばズブの素人で、有力企業の後ろ盾はなし。無謀すぎる!バカじゃないの!?とさんざん言われまくったけれど、僕には明確な勝算があったのだ。

ホリエモンも三木谷も見通していた
地方都市のプロ野球ビジネス

 あの頃はガラケー全盛で、携帯メールでの連絡が取り合えるようになっていた時代だ。SNSに慣れてしまっている今の人たちには、ピンと来ないかもしれないが、「今日の夜暇だから遊びに行かない?」「いいね!」というやりとりを、手元の携帯電話ひとつで簡単に交わせるのは、日本社会のとんでもない行動変容だった。

 暇つぶしに友だちや好きな人と、楽しいことをしたい。その欲求を向ける先に、スポーツ観戦はうってつけだった。

 昔も今も、日本のキングオブスポーツは、プロ野球である。暇つぶしの時間とちょっとの出費を向ける先に、プロ野球観戦を選ぶ環境が、携帯電話の普及により急拡大していたのだ。

 レジャーの少ない地方、それも比較的人口の多い都市なら、プロ野球チームの需要は高いはずだと考えた。僕の地元にいる親戚が、福岡ダイエーホークス(当時)を熱狂的に応援し、球場周辺の飲食街や宿泊施設がものすごく儲かっているのを見ていたこともあり、地方のプロ野球ビジネスは、絶対に当たる!と確信していた。