今日からそのまま使える支援ツールを
厚生労働省のホームページで公開
――連載第2回のお話で、制度の企業実務への落とし込みをどう支援するかについて検討するための有識者研究会を開催されたとのことですが、詳しく教えてください。
正式名称は、「令和6年育児・介護休業法改正を踏まえた実務的な介護両立支援の具体化に関する研究会」で、厚生労働省主催で、2025年4月から7月に開催しました。
研究会には、介護分野の有識者、先進的な取り組みを行っている企業の代表者、企業の取り組みを支援している専門家、労使団体の代表者など、幅広い関係者に参加いただきました。さまざまな立場からの意見を集約し、実践的な支援策を検討しました。
研究会では、幾つかの重要な指摘がなされました。例えば、社員の「働き方・休み方」の相談に対応することは企業の役割であると明確にすべき、という点です。他方で、介護そのものに関する相談は、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門家につなげることが重要です。
また、仕事と介護の両立支援を、多様な人材の活躍促進やダイバーシティ経営の一環として捉えることが重要であり、介護は特殊な問題ではなく、誰もが直面する可能性のある課題として位置づける必要があります。
そして、管理職の役割も重要です。管理職は両立支援と職場運営の最大のキーパーソンであると同時に、自身も介護リスクが高い世代です。管理職研修では、部下の支援方法だけでなく、自身のリスクへの自覚も含める必要があります。
――企業に対する支援ツールも公開されていますね。どのようなものですか。
厚生労働省ホームページで公開しています。
この支援ツールの特徴は、企業の負担を最小限に抑えながら、法改正に確実に対応できるよう設計されている点です。仕事と介護の両立支援制度にはさまざまなものがありますが、単に制度を導入しただけでは実効的な介護離職防止は実現できません。それらの制度の趣旨を理解してもらった上で活用されることが、家族介護に対応しながらもいきいきと働き続けることができる職場環境の実現に不可欠だと考えました。
そこで、そうした制度の効果的な運用を、企業実務への負担を最小限にしつつ実現するための支援ツールを作成するに至りました。
支援ツールでは、まず企業が改正法に基づき必ず実施すべき事項を明確に示しています。「少なくともこれをやっておけば法律上求められる対応を適切に実施できます」という事項を明確化した上で、なぜこれらの取り組みが必要なのか、その意義についても分かりやすく説明しています。例えば、「介護は言い出しにくい」「介護休業の使い方を間違えるとかえって離職につながる」といった重要なポイントを、冒頭に「これだけは押さえておきたい」としてまとめています。
また、個別周知・意向確認やトップメッセージ、社内研修を実施するに当たり、企業がそのまま使える様式や資料も豊富に用意しています。
例えば、研修を実施する企業向けには、研修用のパワーポイント資料だけでなく、講師用の読み上げ原稿も作成しました。企業は自社の具体的な制度内容を資料に反映させるだけで、基本的にそのまま使用できます。また、社長メッセージやトップメッセージの記入例も提供しており、実際に先進企業が発信しているメッセージを参考に、アレンジを加えてすぐに使用できるようになっています。
支援ツールは、労使団体を通じて傘下の企業や労働組合に配布され、さまざまなチャンネルを通じて周知されています。今後も継続的な普及活動を通じて、より多くの企業で活用していただければと思います。







