小さな手術は非常勤医師が行っても、胃がんや大腸がんなど大きな手術は主に大野が執刀し、山田がサブに入る。

 24年4月から市の中心部にある「秩父市立病院」の常勤の外科医が、2人から1人に減った影響も受ける。

「緊急を含めて手術がだいぶ来るようになった。近隣の病院で、十分な手術ができるのはここしかないから、どちらか1人がいなくなると、医療圏にまで影響が出るでしょうね。僕は12~13年前に来たんですけど、そのときは常勤医が4人で、それぞれがオペをやって、まあまあいい感じで回っていましたが、今は実働2人なんで、のしかかってくる仕事の密度が濃いです。手術は自分で執刀する数が増えているなという気がします。ワークライフバランスと言っても、僕の場合はもうライフの中心にワークがある感じ。でも、それを若い先生に強いることはできませんね」

引退医師を現場復帰させて凌ぐ
「医療モール」での開業も急増中

 大野は内視鏡検査も年に1000件以上こなす。2年前に臨床の現場を離れた76歳の理事長の花輪峰夫も再び臨床に戻り、週1~2回診療している。

 入院患者の急変などに備える当直に大野らは月6回入る。うち1回は日曜・祝日の「宿日直」で、朝から翌朝まで丸一日病院に詰め、さらに夕方まで働く。

 タフな毎日を支えるのは患者への責任感や使命感だ。「先生がいなくなると、大変ですね」と言うと、大野はこぼした。

「自分で言うのもなんですけど、かなり困ると思います。僕、結構、患者さんを診ているし、手術をいっぱいやってるし、内視鏡検査もすごい件数をやっています。でも1人が辞めると影響が出る、そういう地域では困るんですけどね。それがやっぱり医師不足の問題じゃないですかね」

 大野は花輪らと、それぞれ母校の医局や県などに常勤医師の派遣を依頼するが、進展はない。埼玉県の医師数は22年末で1万3224人と全国7位だが、人口10万人あたりでは180人と最下位だ。