「そんな言い方ある?」36歳で突然失明した男に、医師が笑顔で告げた残酷すぎる真実撮影/小禄慎一郎

36歳にして視力を失った著者・石井健介さん。1ヵ月にも及ぶ入院生活の間、彼はさまざまな治療を受けてきたという。その果てに彼が主治医から告げられた病名と、まさかの言葉とは。※本稿は、石井健介『見えない世界で見えてきたこと』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

1ヵ月にわたる入院生活に
飽きがきていた

 入院生活も1ヵ月がたとうとしていたころ、僕はその生活に居心地のよさを感じながらも、どこか飽きがきていた。それは夏休みも終わりに近づき、時間はあるがやることもなく、1日がやけに長いと思っていた小学生のころに似ていた。規則正しい生活に、同じことのくり返し。変化を好むふたご座の僕にとって、まとわりついてくるような、まったりとした空気がうっとうしかった。

 せめてここに本があれば、と何度思ったことか。家の本棚には買ったまま読みきれていない本が100冊はあふれ、積まれている。この時間があればそれらすべてを読破できるのにと、シニカルな思いが積もっていった。

 時間はのんびりと、しかし確実に流れていく。佐藤さんがリハビリ病院に転院し、続いて名波さんも退院していった。そしてついに、北山さんの退院日も決まった(編集部注/石井さんと同じ病室に入院していた、愉快なおじさんたち)。一緒に過ごせる時間も残りわずか、彼がいなくなったあとの入院生活を想像すると暗い気持ちになってくるが、このころになると、僕の視力にもかすかな変化が起こり始めていた。