娘が泣き続けた理由に納得

 いかんいかん、ここは一度冷静になるために、隣の部屋に行って頭を冷やそうと、私は娘を床に敷いた布団にそっと横たえ、クールダウンすべく隣の部屋に移動した。

 すると――なんと、娘はピタリと泣きやんだではないか。寝ついたのか、と思い、娘のいる部屋に戻ると、また大声で泣き始める。まさか、と思い、もう一度隣の部屋に戻ると、ピタリと泣きやむ。

 そう、娘は、1時間半私に対して泣いていたのだ! 要するに、娘からしたら私は、一度も面倒を見てもらったことのない、赤の他人だったのである。

 半年間、まったく育児をしなかったことを猛省し、悔い改めつつも、娘が一番過ごしやすい環境を提供するために、私はそのまま隣の部屋で、家内が帰ってくるまで読書をして過ごした。その半年で一番読書が捗(はかど)った日になった。

練習~息子がお箸で食べられるように~

 私が43歳、息子が3歳の時。まだ食事を取る手段がスプーン、フォーク、手の3種類だった息子に、もうそろそろ箸の使い方をマスターさせないと、ということになった。

 ある日の夕食時、家内が息子に言った。

「今日からお箸の練習するから、頑張ってお箸で食べてごらん」

 と買ってきたばかりの、アンパンマンのイラストが入ったお箸を渡し、持ち方を教え、食べさせてみることにした。もちろん、初日からうまくいくわけはなく、息子は途中で挫折し、スプーン、フォーク、手の三種の神器に持ち替えて、食ベ物と悪戦苦闘を繰り広げていた。

 それからおよそ1週間後。

「今日は頑張ってお箸だけで食べてみようか?」

 家内が提案するも、2分後にはお箸にギブアップのタップをし、また三種の神器に持ち替えて食べようとした。

「そんなことじゃお箸うまくならないでしょ?」

 家内がたしなめても、箸を握る気配はなく、スプーンで食べようとする。

「お箸で食べないとオバケが出るよ」

 家内のザ・子ども騙しの脅しにもまったく聞く耳を持たず、スプーンで黙々と食べている。