いかにも論理的思考問題といった風情です。
きちんと考えていけば何の問題もなさそうに見えますが……。じつはちょっとつまずく部分があります。
考え方自体はわかりやすいと思うので、A,B,Cそれぞれの視点になって、多面的に考えてみましょう。
「わからない」から、わかること
すでに選択肢が提示されていると考えると、やるべきことは明確です。
10個ある選択肢から、可能性がないものを削っていきます。
そのヒントになるのが3人の会話です。
3人はそれぞれ授業がおこなわれる「階数」「時間」「学部棟」を知っています。
「わからない」という会話しかしていませんが、それはつまり、「自分が知っている情報だけでは特定できない」という意味です。
そこで、それぞれの発言によって「除外できる選択肢」を探していきます。
なお、リストは階数や時間などがバラバラに並んでいてわかりにくいですが、まあ、並び替えたところでヒントが見つかるわけではないので、このまま進めましょうか。
論理的に考えていけば、そんな作業をするよりも早く、答えを絞っていけます。
では、最初のAの発言から。
“A「誰かわかった?」”
Aは「階数」を知っています。
リストのなかに、「3階」の選択肢は1つしかありません。
つまりAが知っている「階数」が「3階」だったら、Aは即座に「3階 12時 西館」が正解だとわかります。
でもAは、この時点では正解がわかっていない。
ということは、正解は「3階」ではありません。
なぜBとCは「Aにはわからない」とわかったのか
本当のポイントになるのは、次のBとCの発言です。
“B, C(同時に)「Aにはわからないよ」”
なぜBとCは、Aが自ら「わからない」とは言っていないのに、「Aにはわからない」とわかったのでしょう。
正解が「3階 12時 西館」であれば、「階数」を知っているAは特定できました。
でも、BとCは「Aにはわからない」と言ってのけた。
これは、正解が「3階 12時 西館」ではないと知っていたからです。
つまり、Bが知っている時間が「12時」ではなく、Cが知っている学部棟が「西館」ではなかったということです。
すなわち正解は「12時」でも「西館」でもありません。
Aの2度目の質問
「3階」「12時」「西館」を含む選択肢を消去すると、リストは以下のようになります。
1階10時東館
2階10時北館
1階10時南館
1階10時北館
2階11時東館
次に3人は、こんなやりとりをしています。
“A「あなたたちはわからないの?」”
“B, C(同時に)「わからない」”
さて、Bが「わからない」と言ったことについて考えましょう。
Bが知っている時間が「9時」か「11時」であれば、それを含む選択肢は1つずつしかないため、この時点でBには正解がわかります。
しかし、Bには正解がわからなかった。
ということは、選択肢から「9時」「11時」を含む候補が消えます。
不可解な結末
これで、残された選択肢は以下のとおりです。
1階10時東館
2階10時北館
1階10時南館
1階10時北館
2階11時東館←×
学部棟が「東館」か「南館」なら、この時点でCは答えがわかります。
しかしCにはわからなかったということは、学部棟は「東館」「南館」ではありません。
つまり残った選択肢は、以下の2つです。
1階10時東館←×
2階10時北館
1階10時南館←×
1階10時北館
2階11時東館←×
問題文では、この次にAが「わかった!」と言っています。
たしかにAは「教室の階数」を知っているため、どちらが正解かはわかるかもしれませんが、
問題を解いている私たちにはわかりません。
そして他に手がかりはありません。
……あれ? おかしいですね。
どこで間違ったんでしょう?
「同時に」の意味
勘の鋭い方は、途中で気づかれたかもしれません。
「あれ、何かおかしくない?」と。
……失礼、見落としていたことがありました。
それは、BとCが……
「同時に」わからないと答えたという事実です。
たしかに、Bの「わからない」発言を聞けば、「9時」と「11時」の選択肢は消えますが、間違っていたのは、その次です。
CはBの発言の後に答えたのではなく、Bと同時に答えています。
つまり、Bの発言を聞いた上での発言ではありません。
CはBと同時に発言したため、この瞬間のCの脳内には、まだ「9時」「11時」という選択肢が生き残っています。
先ほどはCの「わからない」発言をもとに、学部棟は「東館」「南館」ではないと判断してしまいました。
ですが、CはBの発言を聞いてから発言したわけではないと考えると、状況が変わってきます。
Cが発言した瞬間、Cの脳内にある候補をもう一度確認しましょう。
1階10時東館
2階10時北館
1階10時南館
1階10時北館
2階11時東館
Bの発言を聞いていないCの脳内には、「東館」の選択肢は2つあります。
たとえCの知っている学部棟が「東館」だったとしても、候補が2つあるため「わからない」と発言するのは当然のことです。
したがって、学部棟が「東館」である可能性は消えません。
Cの「わからない」によって消せる選択肢は「南館」だけですね。
これが正しい消去です。
復活した「可能性」
BとCの発言からわかったことを合わせると、選択肢から「9時」「11時」「南館」を含む候補が消せます。
ということで、残っている選択肢は以下のとおり。
1階10時東館
2階10時北館
1階10時南館←×
1階10時北館
2階11時東館←×
間違った判断によって導いた先ほどの結果と比べると、「1階 10時 東館」という選択肢が復活しました。
そして、この時点でAは正解を特定しました。
Aが知っている情報が「1階」なら、Aは正解を特定できません。
残っている選択肢のうち、「それを知っていれば正解を1つに限定できる」階数は「2階」です。
ということで、正解は「2階 10時 北館」です。
授業がおこなわれるのは「2階10時北館」
この問題から学べること
「わからない」と発言した人の視点になって、選択肢を消去していく論理的思考問題は多数あります。これは比較的オーソドックスなタイプです。
ただし、「同時に答えた」という部分を見逃すだけで解けなくなる、面白い問題でした。わかっているすべての情報からヒントを得ようとすると、思わぬ意味や事実が見えてくることがあるんですね。
POINT
・「わからない」という事実への視点の当て方を変えてみると、そこから「わかること」が見えてくる
(本稿は、シリーズ最新作『もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋した内容です。本シリーズでは同様の「読むほどに賢くなる問題」を多数紹介しています)











