死後に隠し子や愛人が発覚するなど、ドラマのような出来事も起こるのが、相続問題だ。死後の愛人の子を認知する「死後認知」の一例や、遺言書の破棄によって希望通りに財産を分けられるケースなども紹介。大切な人の死後にも、円満に相続問題を解決するポイントを、司法書士・行政書士であり相続の専門家である澤井修司氏が解説する。※本稿は、澤井修司『あるある!田舎相続』(日刊現代)の一部を抜粋・編集したものです。
故人の「息子」を名乗る人物が
現れて遺留分を請求してきた
「妻の空子に全財産を相続させる」――捨男は、このような内容の公正証書遺言を残して亡くなりました。この遺言にのっとって、すみやかに相続の手続きが進められ、何も問題は起こらないかと思われましたが、しばらくすると、40代と見られる男が訪ねてきて、こう言ったのです。
「父に線香をあげたいのですが」
空子と陽太は混乱してその男を追い返しましたが、翌日になると、空子は、相続の手続きを頼んだ司法書士の事務所を訪れました。戸籍の調査を依頼するためです。
司法書士による調査結果は驚くべきものでした。空子は後妻で、その前に怨子という女性と結婚していたこと、しかも、前妻の怨子との間に陰男という子どもがいたことが発覚したのです。訪ねてきた男は、陰男に違いありません。
空子は、捨男に結婚歴があるなんてまったく知りませんでした。どうやら捨男は大学在学中に怨子と入籍し、卒業直後に陰男ができたようでした。空子はショックを受けて寝込んでしまいました。
ところが、しばらくして再び陰男が訪ねてきました。
「あなたのことは知りませんでしたし、すべて私が相続しているんです。帰ってください!」
空子は陰男を追い返しましたが、数日後、内容証明郵便が空子のもとに届きました。
「私は、亡捨男の全財産の8分の1の遺留分を有しています。よって貴殿に対し、本書面をもって遺留分侵害額請求をいたします」
つまり、「遺留分を渡せ」という請求です。空子は「冗談じゃないわよ」と無視しました。それでも結局、空子は陰男から訴訟を起こされて、遺留分を渡すことになったのです。