思い出が詰まった車は
家族で受け継いでいく歴史的財産

 イメネスさんは購入してから20年間に、塗装のペイント材に約5000ドルを費やし、少しずつ自力で塗り替えつつ、レストアしてきた。ちなみに現在、この車の相場価値は、3万ドルを超えているという。

「自分が死ぬ時は、この車を我が子に遺すよ。家族代々で大切に乗れば、永遠に乗れるはずだからね」とイメネスさんは言う。

 墓地の墓掘り人として働く彼は、ローライダーを自分ひとりの趣味とは捉えておらず、子や孫に継承していく歴史的財産だと考えている。

「だって、自分の親たちもそうしてきたからね」と前述のカンポスさんは言う。幼い頃、自宅のガレージにはローライダーの車があり、父親がそれを休日に修理するのを見て育ち、休みの日には家族全員で乗って出かけた思い出が詰まっているのだ。

 カンポスさんいわく、1940年代にはローライダーという言葉はまだ一般的には使われていなかったが、当時のメキシコ系移民たちは、車のトランクに砂袋や煉瓦を積んで、物理的に重さを加えて車高を下げようとしていた。

 だが、カリフォルニア州では、1958年にホイール・リムの一番下の高さよりも車体を下げることが法律で禁止され、取り締まりの対象となった。そんな時、B-52などの戦闘機に使われていたペスコ社の油圧ポンプの中古部品を再利用して、車高を上げたり下げたりできるスイッチを開発する者たちが現れた。

「最初は航空機の部品だったけど、その後、ローライダー専用の油圧ポンプも売り出されて、それを装備するのが流行り、今はそれがファッションとしても主流になってる」とカンポスさんは言う。

 つまり、警察のパトロールが来る時にはスイッチを使ってさっと車高を高く調整しておけば、違反チケットを切られずに済むというわけだ。

 だが、油圧式でスイッチを入れ替える度に、車が飛び跳ねて上下するため、デリケートなクラシックカーの車体には負担がかかりすぎる。それを防ぐために、エアバッグ方式のコンプレッサーを使い、ゆっくり車体を上下させる方法も編み出された。