社内の認識が変わった、と一番実感したのは、工場の生販会議に呼ばれたときです。

 生販会議とは、工場の生産予定を組む月1回の会議。

 明治の主力商品を取り扱う部署が一堂に会し、どの部署のどの製品のために、いつ、何本のラインを稼働させるかを取り決めていきます。

 長らく、私たちはその末席にも加われませんでした。何をつくろうと、売れようと売れまいと、明治製菓全体への影響はさほどないと見られていたからです。

 部外の人々から見た製菓営業部は、少々イキが良いだけのポッと出の部署。大企業に紛れ込んでいるベンチャーのようなものでした。

 そこまでの関心さえ、持たれていなかったかもしれません。

冬場に部署間で発生する
工場のライン争奪戦

 これまでの工場部門や生産部門との連携は、生販会議を通したものではありませんでした。

 ラインが空いた間に使わせてもらったり、個別に研究員に頼んで一緒に実験したり。正規軍ではなく、レジスタンスかゲリラのような活動をしていたわけです。

 それができたのはとりもなおさず、扱う物量や、それに伴う時間や、動くお金が小さかったからです。

 しかし70億円を売り上げる取引量となると、もう小さいとは言えません。

「工場の稼働に影響するので、次回の生販会議で状況を話してほしい」

 とお達しが来たとき、私たちは思わず小躍りしてしまいました。

 ついに市民権を得た――それは数字と同じくらい、大きな達成感でした。

 工場の生産予定に影響する量を扱えるようになったこと。それは、明治製菓が長年抱えてきた問題の解決に寄与することでもありました。

 チョコレートは冬によく売れ、夏には売れない。そのため工場の稼働量が落ちるという「農閑期問題」です(編集部注/夏場は工場のラインが動かずヒマを持て余すことを指す)。

 原料は最終商品と違い、季節の影響をあまり受けません。コンビニのチョコチップアイスも、ファミレスのチョコレートパフェも、夏だからといって消費量が落ちたりはしません。部の業績が上がるにつれ、夏場の稼働予定の空白が、私たちの手で埋められていきました。