過去2~3年の賃上げは、政府の肝いりで主に大企業の正社員中心に行われてきました。来年もこの傾向は変わりませんが、それとは別に、2026年はいよいよ非正規労働者の給与水準が目に見えて上昇する一年になりそうです。
経済学に「ルイスの転換点」という言葉があります。それまでずっと低く抑えられる傾向にあった非正規労働者の賃金が、転換点を超えると上昇に転じます。ルイスの転換点とは労働力の供給減少の転換点です。
日本の労働市場では、1980年代後半からふたつの要因で継続的に労働人口が増えてきました。ひとつが女性の社会進出、もうひとつがシルバー層の雇用延長です。夫婦共働きが当たり前になるとともに、定年後も70歳あたりまで働く傾向が生まれたことで、過去30年以上にわたって労働人口、中でも非正規労働人口は一貫して増える傾向にありました。
この供給増加が長らく非正規労働者の賃金水準を下げ続けた要因でした。その構造が急速に変わり始めています。企業にとっては働き手を見つけるのがさらに難しくなった中で、大企業がパートアルバイトの賃金水準を引き上げ始めています。
これがルイスの転換点を超えた労働市場で起きることです。2026年はアルバイトパートの賃上げ競争が起きるのです。結果として来年はいよいよ労働市場の弱者の賃金環境も改善される一年になるでしょう。
ただし、この件ではもうひとつ気になることがあります。実質賃金は上がるのでしょうか?
2026年は食料品や光熱費など生活に直結する物価は、今年に続いて上がることが予想されます。さきほどお話しした日銀の利上げについて、物価上昇を抑えるまでの十分な利上げを行うことができないだろうと予想されるからです。
円安傾向と相まって小麦や食用油、輸入肉など食品の値上げは続きそうです。おコメの価格も同じで、高止まりしたまま2026年の新米のシーズンを迎えるのではないでしょうか。朗報としてはガソリンの暫定税率の廃止で、この部分だけは生活が少しだけ楽になりそうです。







