外国人ホースマンの紹介には
厚生労働省の許可が必要だが……
『サムは、もぐり営業だ』
サム氏より遅れてエージェント業を始めた苫小牧のネパール人、ビシュヌ・ギリ氏が入管と警察にそう告発したのは、2020年だった。このトラブルは週刊誌に取り上げられた(「週刊新潮」2020年11月26日号)。
外国人ホースマンを牧場に紹介するには、厚生労働省の許可が必要だ。「有料職業紹介事業許可」という。
ギリ氏は中古車の販売やカレー店を営む実業家。馬に関しては素人だが、ホースマンを紹介できるこの許可は取得していた。先に始めたサム氏は馬のプロだが、この許可を得ていなかった。
告発があった当時はコロナ禍で外国人が入国できず、エージェントの間でホースマンの引き抜き合戦が繰り広げられていた。
サム氏はこう振り返る。
「ボクも大学とか行って勉強した人間じゃないし、日本のルール全部わかっていたわけじゃない。免許がいるって知らなかった。いい勉強になった。ボク、トラブルあって逃げる人間じゃない、闘っていくタイプの人間だから、『自分のミスだ。やり直そう』って」
苫小牧のギリ氏は2018年、ホッカイドウ競馬の門別競馬場にインド人を紹介した。地方競馬が外国人廏務員を採用するのは初めてのことだった。これをきっかけに、他の地方競馬も次々と外国人受け入れに舵を切ることになる。
サム氏によれば、2人は以前から知り合いだったそうだ。ギリ氏が新ひだか町で経営するカレー店をサム氏が訪れて、親しくなった。しかもサム氏はエージェントを始めたころ、「一緒にやるか?」とギリ氏を誘ったという。
「『やらない』って言って断ったのに。インド人増えたから『これはビジネスになる』って思ったんじゃない?今はどこかで偶然会っても、ボクのところには寄ってこない」
俺はホースマンだけどギリはビジネスマンだ、とサム氏は呟いた。
私はギリ氏に取材を申し込んだが、多忙を理由に応じてもらえなかった。
ぼったくりとしか思えない
仲介業者も跋扈する
「最近、インドのエージェントがよくない。お金を取り過ぎるの、彼たち、から。インドのエージェントを変えるかもしれない」
彼ら、ではなく、彼たち、とサム氏は言う。1人1人の顔が浮かんでくるようで、いい表現だな、と私は思った。







