「取り過ぎるって、いくら取ってたんですか?」と私は尋ねた。

「いや、それは、それぞれだから」

 私はホースマンや牧場関係者から聞いた額を、サム氏にぶつけてみた。人によって額がマチマチで、相場がわからなかった。

「日本円で130万ぐらい払ったって人もいますけど?」

「あるだろうね」

 サム氏はあっさりと言った。

「一方で、550ドル(約8万2000円。来日時のレート)だけだって言う人もいます」

「それ、誰だかわかる。向こうの廏舎長がその額でオーケーしたらしい。理由はわからないけど、金額を間違えたのかもしれない」

 5500ドル(約84万円)と書くところ、0をひとつ書き忘れたということだろうか?

「彼たち、日本に来るとき、こっちでできない手続きがある。向こうの調教師が動いたら、お金かかる。ドバイにいた乗り役を引っ張ってくるときは、移籍する補償金を廏舎に払わなきゃいけない」

 そう説明するサム氏だが、自身は「現地での価格交渉にはタッチしていない」という。そしてスマホを取り出し、私にSNSの画面を見せた。表示されたのは、私も知っている浦河のインド人からのメッセージだった。

『彼を雇ってくれたら、私からサムさんに60万円払います』

 その「彼」が馬に騎乗する動画もあった。

「『俺は乗れるやつしかとらない』って断ったけど、60万くれるっていうんだから、あいつがこの男からいくらぐらい取ってるか、想像つくよね?」

日本の寒さに耐えきれず
逃げ出してしまう外国人労働者も

 かつて浦河のある牧場主は、日系ベネズエラ人のエージェントからベネズエラ人の乗り役を2人雇った。1人は「寒すぎるから」と四国の高知競馬場(地方競馬)に移り、もう1人は夜逃げした。

「そのエージェント、高齢の人だったけどかわいそうだったよ。毎月の給料から返済するって約束で渡航費とか全部立て替えたのに、踏み倒して逃げちゃったから」

 こうしたリスクを避けるため、サム氏は渡航費などの立て替えはしない。

「向こうで大金を借りて、彼たち日本に来る。でも他のエージェント、こっち呼んだのに仕事がなかったってトラブルがある。じゃあその借金、誰が払うの?ボク、彼たちにそんな思いはさせない。エージェントは牧場を助けるいい仕事だけど、『やるなら真面目にやってください』って言いたい」

 言葉の端々に、先駆者の誇りがのぞく。