2日間でついた最高額は5億2000万円(税抜き)。落札総額は、過去最高だった前年を約23億円上回る、281億4500万円に上った。浦河町の1年の歳入(約113億円・2023年度)の倍以上だ。

 巨額の金を動かす人たちはこうした比較に何の意味も見出さないのかもしれないが、小さな金に一喜一憂して60年生きてきた私は気になってしまう。

 主催した日本競走馬協会の吉田照哉氏(社台ファーム代表。セレクトセールは社台のセリ市とも言われる)は「驚きに近い数字」とコメントした。

 私の個人的な思いだが、セリの落札額には上限を設けたらどうだろう?いくらなんでも高額過ぎないか?上限額に達したら、最後は購入希望者同士のくじ引きやコイントスで決めてもいいではないか?もしくは上限を上回った額は、JRAの売上げの一部が国庫に入って畜産振興と社会福祉に使われるのと同様に、過疎化対策や教育など地域に還元したらどうだろう?

成田空港建設のおかげで
広大な牧場が手に入った?

 浦河の牧場で働く日本人の中にも、セレクトセールへの疑問を口にする人はいる。

「自分にはこれだけ金があるんだぞ、っていうのをアピールする場に見えちゃって」

「その分、インド人とかに回してやればいいんですよ」……。(編集部注/牧場では、競走馬の“乗り役”として、インド人など多数の外国人を雇っている)

 一方で「こうした世界規模のセリが日本の競馬界を活性化させる」「馬産地にも利益が回ってくる」と話す人たちももちろんいる。

 ノーザンホースパークのゲートの外には牧場があり、強い堆肥の臭いがする。車の中にも漂ってくるほどで、会場入りするとき私は数秒息を止めた。その臭いが、帰りはなぜか気にならなかった。魔界から実世界へ生還した安堵だろうか。

「社台は成田空港のおかげで大きくなった」

 日高のある牧場主は言う。「やっかみ半分で言わせてもらえば」という前置きもついていた。

 社台ファームは現代表、吉田照哉氏の父、吉田善哉氏の時代に大きく発展した。善哉氏が北海道白老町の社台牧場(父親の吉田善助氏が創業)から独立して作った「千葉社台牧場」。

 国鉄成田駅から車で10分だったこの牧場の土地価格は、1966年、成田空港の建設が決まったことで高騰した。莫大な売却益を元手に善哉氏は、早来町(現・安平町)、千歳、苫小牧に土地を購入。欧米のような広大な牧場の建設に着手した。